10月12日(水)
新学期の初日は、教科書販売があります。私が担当した超級クラスでも、高いとか何とか言いながら、結局全員買いました。そして、ふだんより少々神妙な顔つきで、名前を書き込んでいました。新しい教科書を手にすると、未知の世界に飛び込むわくわく感が沸いてくるのでしょう。
私も小学校から大学まで、新しい教科書のインクの匂いをかぐと、気持ちが高揚したものです。時にはその教科書は苦難の道への案内書だったりもしたのですが、初めて教科書を開くときは、その教科書をマスターすれば万能の力を手に入れられるような、今思うと実に前向きな勘違いをしていました。
学生たちも新しい教科書にそんな期待をかけているのでしょう。学生は教科書に夢を映して一生懸命勉強すればいいのですが、教師としては、その教科書を使って、学生たちが寄せた期待や描いた夢を実現させていかなければなりません。教科書の字面を2倍にも3倍にも膨らませて、学生たちが想像も及ばなかった景色を眺めさせることが、私たち教師に課せられた責務です。
ところが、前学期の成績が思わしくなく、今学期も同じ教科書で勉強しなければならない学生もいます。その中には、やる気を失ってしまう学生も少なくありません。一度勉強して書き込みのある教科書には、確かに新鮮味はありません。でも、その教科書に見えていなかったところがたくさんあるから、合格点が取れなかったのです。「また同じ勉強だ」ではなく、一回目には見落としたり聞き落としたりしていた点をしっかり自分のものにするんだという気持ちで教科書に接すれば、きっと新たな発見があり、それが高揚感をもたらしてくれます。
幸い、私のクラスは、全員新しい教科書でした。早速、その教科書を使って授業をしました。今までにない刺激を感じたのか、活発な授業になりました。この勢いを期末テストの日まで持続していきたいです。