空白じゃないよ

9月7日(水)

時々、卒業生から書類作成の依頼が来ます。その申請書には書類の使用目的を記入する欄がありますから、それを見ることで卒業生の消息を知ることもよくあります。しっかり勉強しているようだと安心したり、意外な転身に驚いたり、結構波乱万丈の人生を歩んでいるんだなあと感心させられることもあります。

Wさんは、苦労して入学したK大学をあっさりやめてしまったようです。送り出した側としては、小論文の添削をしたり、面接練習をしたり、落ち込んでいたときに励ましたり、WさんがK大学に受かるまで精一杯世話を焼いたつもりです。それなのに専門の勉強もしないうちにやめて帰国して、今度は調理の専門学校に進もうとしているようです。

無理をしていたのかなとも思います。“日本の大学で勉強する”と漠然と思っていただけで来日し、周りの友人が名の通った大学を志望校とし、実際にそこを受けて受かって喜んでいる様子なんか見ているうちに、自分にもできそうな気がしてきたのでしょう。そして、勉強してみると、そりゃあ辛い時もありましたが、K大学に受かってしまい、自分も歓喜する側にまわることができました。

しかし、入学してみると、浮かされていた熱も冷め、改めて自分自身を見つめてみると、これで自分の人生が決まってしまっていいのだろうかと思ったのかもしれません。そして、調理の専門学校を選び直したのです。

Wさんにはあれこれ手をかけただけに、もったいないという気持ちもありますが、こういう決断は早いほどいいです。Wさんだっていつまでも若いわけじゃないんですから。また、今度こそは、自分の将来を冷静に設計したのだと信じたいです。履歴書の上では、2016年はWさんにとって空白の1年になりますが、実際には今までの人生の中で一番真剣に自分自身と向き合った充実した有意義な1年になることでしょう。

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