鍛錬の夏

8月5日(金)

Aさんはクラスで一番質問が多い学生です。授業中、わからないことがあると、すぐ「すみません、〇〇はどういうことですか」「××について、もう少し詳しく説明していただけませんか」などときいてきます。中には非常に基本的な質問もありますが、私はそういうAさんの質問を決しておろそかにしようとは思いません。

教室の中では携帯電話は使用禁止です。ですから、わからないことがあってもググることはできません。わからないことをそのままにしておきたくなかったら、教師に聞くのが一番安全確実なのです。隣の学生に聞くこともできますが、その間に授業は遠慮なく進みます。わからないことが1つ解決しても、また新たにわからないことが2つぐらいできてしまいます。教師に尋ねれば、そこで授業が止まりますから、わからないことが増える心配はありません。

Aさんは、「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」という精神を自然に身に付けています。こんなことを聞いたらかっこ悪いと思って、教師の目を盗んでググろうとしたり母語で周りの学生に聞いたりそのまま打ち捨てようとしたりする学生も少なくないでしょう。それゆえ、Aさんの質問に答えることは、そういう多くの気の小さい学生の疑問を解消することにも直結するのです。このクラスの学生はAさんに大いに助けられており、Aさんはこのクラスのペースメーカーになっていると言ってもいいのです。

Aさんのクラスでは、他のクラスとは違った緊張感を覚えます。Aさんからどんな質問が出てもそれに対応できるようにって思います。Aさんが質問しなくても理解できるような授業の進め方を考えます。そうやって臨んでもAさんに質問されると、計画の抜け落ちを感じさせられるし、Aさんの質問に端的に答えられないと、伝えることの難しさを感じずにはいられません。

今学期は、Aさんに鍛えられているような気がします。

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