懐かしい文字

7月11日(月)

私が担当する新しい超級クラスの名簿に、Lさんの名前がありました。Lさんは、新入学の学期に初級クラスで受け持った学生です。発言が多かったり成績がすばらしくよかったりしたわけではありませんが、授業に集中し、勉強したことを確実に物にしていくタイプの学生でした。その学生がこつこつと勉強を続けて、超級まで上り詰めたのです。

会うのを楽しみにしていたのですが、教室に入ってもLさんの姿がありません。チャイムが鳴り終わっても、全員の出席を取り終わっても、現れませんでした。Lさんのことを気にしつつオリエンテーションを進めていたら、Lさんは、20分後ぐらいに、遅延証明書を手に申し訳なさそうに入ってきました。そうだよね、Lさんがそう簡単に休んだり遅刻したりしないよねと安堵しました。

今学期は8月1日にスピーチコンテストが迫っているため、始業日にいきなりスピーチコンテストの原稿を書いてもらいました。週末にその旨を連絡しておいたのですが、多くの学生が自分の思いを原稿用紙上に表現するのに苦しんでいました。Lさんもそういう学生の1人で、授業中には書ききれず、図書室などで書いて持ってくるようにと伝えて授業を終えました。

午後の授業の後、机に戻ると、何人分かの原稿が置かれていました。その中に、懐かしい文字が。Lさんの原稿です。初級のときと全く変わらぬ、私より数倍上手で几帳面な楷書で埋められた原稿用紙がありました。初級からここまで、順調なことばかりではなかったでしょうが、その大波小波を乗り越えて、よく育ってくれたと思いました。

初級で教えた学生に中級や上級で再び出会うのは、教師として非常に大きな楽しみです。「初級の頃はいい学生だったのに…」とぼやきたくなる学生が少なくない中、順良な心を保っているLさんは、ひときわ光る存在です。そのLさんも、今学期は自分の大きな方針を決めなければならない学期です。今まで続けてきた努力で、もう1歩進んでもらいたいです。

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