社長の貫禄

5月18日(水)

午後、職員室で学生のタスクの添削をしていると、「金原先生に会いたいって言ってるだいぶ前の卒業生が来ているんですけど…」と呼ばれました。目を上げてカウンターの向こう側を見ると、ちょっと記憶にない顔がこちらを向いて軽く会釈をしていました。

首をひねりながらカウンターまで行くと、「先生、覚えていますか」と言われましたが、覚えがありません。「2002年の卒業生のBです」「あ~あ、Bさんか。あの頃は中国の学生が少なかったよねえ」「ええ、そうでした。進学のことで先生にずいぶん怒られました」というわけで、今から14~15年前の学生でした。

Bさんは地方の大学に進学し、その地元で就職し、今は仕事で東京や横浜などへちょくちょく来るそうです。「じゃあ、もう社長?」「いえいえ、とんでもないです。仕事でスーツ着てるだけですよ」と言いますが、スーツの下からのぞいたおなかは、社長の貫禄十分でした。

BさんはKCPにいたとき、特別に優秀な学生ではありませんでした。入った大学も、いわゆる有名大学ではありません。でも、ちゃんと日本で就職し、10年も仕事をしているのです。1人で仕事を任せられているということは、会社からの信頼も厚いのでしょう。もう、どっしりと日本に根を下ろしています。

もちろん、KCPを卒業してからのBさんの道のりは平坦ではなかったでしょう。その山あり谷ありの道を歩きぬいて、今の地位にたどり着いたのです。日本で進学したい、就職したい、ずっと暮らしたいという学生には、Bさんのそういう人生を知ってもらいたいです。有名大学に入ったからといって、日本で就職し、ずっと暮らし続けられる保証が得られたわけではありません。そういう競争のスタートラインに立ったに過ぎないのです。

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