欲張らずに

2月4日(火)

今学期の選択授業・小論文は、課題について調べる時間を与えています。だから、先週この稿に書いたRさんのようなことも発生しうるのです。しかし、根拠のある意見を書いてほしいので、時間を決めてスマホで調べてもらっています。

本気で取り組んでいる学生は、決められた時間内で調べ物は済ませ、あとは書くことに集中します。そこまでの本気度がない学生は、漢字を調べるとかなんとか言い訳しつつ、スマホを手にします。こちらも、そういう怪しげな学生は名前を控えておきます。

先週登場のRさんはその怪しげ組のメンバーでした。授業終了15分前には、もう書き上げているふうでした。私が原稿用紙を取り上げて読むと、心配そうな顔でこちらを見上げていました。AIに頼った形跡はありませんでしたが、間違いが多かったですね。「友達に読んでもらいなさい」と言って原稿用紙を返すと、それは恥ずかしいのか、自分で読み返していました。

チャイムが鳴ってもSさんは原稿が仕上がらず、5分ほど書き続けてから提出しました。「先生、私は書くのが遅いです。どうしたら時間内に書けますか」と聞いてきました。「Sさんは調べたことを全部書こうとしているんじゃないの?」と答えると、「はい」とうなずきました。「それじゃあ、書けないよ。調べたことの中からどれか1つにポイントを絞らなきゃ」とアドバイスすると、「1つにするの、難しいです」と辛そうな表情で訴えてきました。

でも、ここで欲張ってはいけないのです。論点を1つに絞ることは、論旨を明確にすることにつながります。筆鋒鋭く読み手の心に突き刺さる文章は、何でもかんでもという考え方からは生まれません。

Sさんの小論文はまだ読んでいませんが、なんだか楽しみです。

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