1月29日(金)
中国語の「山」と、日本語の「やま」は同じだと思いますか、違うと思いますか。「山 中国」、「山 日本」で、googleで画像検索してみてください。全然違う画像が出てきます。
「山 中国」は、まさに峨峨たる山容であり、なるほど象形文字の「山」はここから生まれたのかと納得できます。これに対し、「山 日本」は、なだらかな稜線の緑あふれる穏やかな景色ばかりです。両者の間には、歴然たる違いが見られます。
超級クラスの読解テキストに関連して、こんな画像を学生に見せました。両方を見比べた学生からは、「おお」とも「ああ」ともつかない驚きの声があがり、同時に、中国の学生からは、「山 中国」の画像こそ中国語の「山」の意味するところだという感想が聞かれました。さらに、大和三山の画像を見せたところ、これは「山」ではなく「おか」だとある学生が発言し、多くの学生がその意見にうなずいていました。
漢字が伝来した当初、日本人は「山」という漢字に、自分たちが古来有していた「やま」というやまと言葉を当てはめました。それを訳語としたと言ってもいいでしょう。しかし、上述のように、山≠やまです。「山」は「やま」と訳されたとたんに、峨峨たる山容を失い、なだらかな稜線を描いてしまうのです。「やま」は「山」と訳されるや否や、耳成山にも鋭い岩が屹立してしまうのです。
これと同じような誤解が、いたるところにあるんじゃないかと思います。日中は同じ漢字圏といいつつも、同じ漢字で違うことを考えているのですから。なまじ字が同じだから誤解に気付きにくく、混迷の度合いを深めているんじゃないでしょうか。こういうことに思いが至るのも、留学の意義です。
実は、「山」と「やま」は、日本語教師養成講座の講義が元ネタです。今日のクラスにも、日本語教育に進もうと考えている学生がいます。その学生たちに、ほんのちょっぴりサービスをしました。