オリンピックの陰に

11月9日(土)

昨日の作文の添削と採点をしました。私が担当している中級クラスでは、文章で意見を述べる型を身に付けてもらうことに力を入れていますから、作文の時間には型を示し、型に合わせて使って(覚えて)ほしい表現もパワーポイントで見せています。

昨日は、自国でオリンピックやワールドカップのような世界的なスポーツ大会を開催することについての賛否を述べてもらいました。作文を書く前に数名のグループで意見を言い合って、自分とは違う意見の人の考え方も聞いてもらいました。この話し合いが思いのほか盛り上がり、いろんな形で議論を続けさせたくなりましたが、それでは授業の趣旨と全くかけ離れてしまいますから、泣く泣く打ち切って、作文に移りました。

教室内を回っていると、あちこちから声がかかって、こういうことを言いたいんだけど、どう書けばいいかとか、こういう書き方でいいかとか聞かれました。議論が盛り上がった余韻なのかなと思いました。

作文の時間は、勉強した語彙や表現を実際に使ってみるという考えから、教科書やノートは見てもいいことにしています。その代わり、スマホの辞書などは厳禁です。私が教室をうろちょろするのは、辞書代わりでもあるのです。もちろん、スマホを使わせないように監視もしています。

学生がスマホの辞書を使うと、概して難しい表現を見つけ出し、それを使うのですが使いこなせずに文をぎくしゃくさせてしまいます。その結果、文章全体に害毒が回り、添削も採点も難しくなるのです。書いた本人だって、書いた直後ならまだしも、作文が返却された時に読み返しても、何が書いてあるのかわからないと思います。

その作文を、朝から添削しました。Kさんの作文が妙にこなれていました。Kさんは絶対知らないだろうなという単語もありました。こちらが示した型を全く無視していました。おそらく、私が他の学生と話している隙に、AIに文章を考えてもらったのでしょう。

Kさんが大学を出て就職するころには、文章はAIが書くのが当然になっているのかもしれません。だから、教科書・ノートを参考にしながら手書きで原稿用紙のマス目を埋めていく文章作成法など、時代遅れだと言えないこともありません。しかし、AIに指示を出すにしても、読み手に訴える力のある文章とはどんなものかということぐらい知っておかないと、結局何も描けないのと同じことになってしまいます。

Kさんの作文は、こなれていますが、よく読むとツッコミどころ満載です。それをことごとくツッコんで、しかも型を守っていないということで、Fにしました。これを返すときに、Kさんからじっくり話を聞きましょう。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です