11月9日(木)
初級のクラスは、どこのクラスでも、「会話」となると喜んで話し始めます。習った文法や語彙を使っての会話ですから、話せることは限られています。それでも、こんな時はどう話せばいいかと、自分の話したいことを身振り手振りも交えて私に訴えかけ、応用範囲を少しでも広げようと目を輝かせます。
中級あたりになると、ある課題に関しての意見を言い合うようなことが中心になってきます。意見のない学生は黙り込んでしまいますが、他の学生の意見を聞いているうちになにがしか語りたくなり、いつの間にか口を開いているものです。
「うちのクラスの学生はおとなしいですよ」と脅されて代講に入った上級クラス、本当におとなしい学生たちばかりでした。指名されれば何か答えてくれましたが、クラス全体に聞くとなしのつぶてでした。不吉な予感を抑えつつ作文の時間に入りました。課題について話し合わせたうえで作文を書かせてくれという指示を受けていましたから、クラスを数名ずつの数グループに分けて、話し合いを始めました。
私が作文を担当しているクラスなら、各グループが口角泡を飛ばして議論をします。しゃべり疲れて書けなくなるのではと心配したくなるほどです。グループを回っていると、「先生はどう思いますか」「こんな場合、日本人はどうしますか」など、議論に巻き込まれそうになります。
ところがこのクラスは、グループに分かれても静かなままです。近くまで寄ると、やっと話し声が拾えるという程度です。かといって、スマホに夢中になっているわけでもありません。最後に各グループでどんな話が出たか発表してもらいましたが、案の定、ありきたりの内容でした。
そして、作文を書いてもらったのですが、出来はどうだったのでしょう。提出された作文は、そのまま担当のS先生に渡しました。S先生が呻吟なさることのないよう祈るばかりです。
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