12月10日(木)
Sさんは2017年に理科系の大学進学を目指す初級の学生です。授業後、理科系の大学・大学院で勉強したらどんな将来が待ち構えているかを聞きに来ました。
Sさんは理学部の物理か化学を考えています。そこで博士課程まで進んで、研究者になりたいというのが現時点での希望であり夢です。そして、大学に残ったらどんな将来像が描けるかという質問ですが、残念ながら、あまり明るい道筋を示せませんでした。
日本の場合、理科系で一番就職がいいのは修士です。博士になると企業への就職は修士より難しくなり、かといって研究職のポストが豊富にあるわけではありません。博士の学位を取ったのにそれに見合ったポジションに恵まれていない研究者がたくさんいます。たとえ研究職を得ても、そこに安住できるわけではありません。今は有期雇用がほとんどで、3年とか5年とかでしかるべき成果が出せないと、契約打ち切りになってしまいます。
万難を排して研究を続けていくにしても、基礎研究の場合、自分の研究がどのように発展・展開していくのか見えずに悩むことがよくあります。芽が出なくても頑張り続けることは、想像以上に精神的な負荷がかかるものです。いまどきの研究者とは、経済的にも精神的にもきついのです。
そもそも、物理や化学の研究がどんなところにつながっているのかという質問もありました。触媒や超伝導や熱電変換素子や、思いついたことをいくつか話しました。こちらは多少夢のある話ができたかもしれません。
なんかわけがわからないけどとにかくEJUでいい点数を、という学生が多い中、Sさんはきちんと足が地に着いた将来設計をしようとしています。いたずらに有名大学といわないところも立派です。あとはただ、日本語の力が伸びてくれれば…。