12月1日(火)
Cさんは、最近授業に出ていません。学校へ来ていないわけではありません。何をしているのかというと、家で受験勉強をし、何か困ったことがあると学校に顔を出すという生活をしているのです。ずいぶん虫のいい話です。もちろん、留学のビザでこんなことが許されるわけがありません。しかし、受験のことしか頭にないCさんには、そんなことをいくら言っても右から左へと抜けていくだけです。糠に釘どころではない手ごたえのなさです。
だいたい、この期に及んで最後の追い込みとか言って引きこもりをするようじゃ、先は見えています。その余裕のなさは、効率の悪さにつながっているのです。私の目には、Cさんが一人で勉強を続けられるほどしっかりした精神の持ち主には見えません。学生たちの年代では、励ましあう友人の存在が大きいのです。
それよりも何よりも、現状のCさんの日本語力では、よしんば志望校に受かったとしても、そこできちんとした勉強ができるのか、はなはだ心もとないのです。「書く」「話す」という情報を発信する技能に不安を感じさせられます。引きこもり状態で、母国語で物事を考えていたら、日本語力は伸びるどころか衰えてしまいます。
同じクラスのUさんは、すでに滑り止めには受かっているもののあまり行く気はなく、年明けに本命校を狙う段階です。Cさん同様プレッシャーがかかるはずなのですが、毎日学校に通い、授業にも積極的に参加しています。初級の時の先生に、「遠い将来のことを考えて悩むより、今できることを確実にしなさい」と言われて以来、これを肝に銘じてきたといいます。私があれこれ言うまでもなく、KCPで少しでも日本語の力をつけてから進学したいと言っています。同じ時期に同じ国から来たのに、どうしてこんなに違うんでしょうか。