津波でサーフィンはできません

5月17日(水)

中級で使っている読解の教科書に、津波てんでんこの話が載っていました。津波てんでんこは東日本大震災の後で広く知られるようになりました。日本人にとっては常識に近くなってきましたが、留学生にとっては必ずしもそうではありません。ですから、読解の時間にこういう話題を取り上げる意義もあります。

しかし、その教科書のその課に載っている挿絵がいけません。サーフィンができそうな波から逃げる親子と見られる人たちが描かれています。津波は、台風の波や、北西の季節風が吹きすさぶ日本海沿岸に押し寄せる高波とは違います。それらに比べて波長がはるかに長い、海面が盛り上がるような波です。確かに、そういう波は絵にしにくいです。でも、だからと言って、サーファーが涙を流して喜びそうな波を、さも津波であるかのように見せてはいけません。

学生たちが教科書の挿絵を津波だと誤解をしないように、東日本大震災の津波の動画を見せました。車も家も大木も港に停泊していた船さえも流されていく動画に、普段の読解の授業には興味も示さない学生まで真剣に見入っていました。SさんやLさんなどは顔を引きつらせながら、でも目はそらしませんでした。

この動画は、見せた後に特別な活動をしたわけでもなく、読解の授業の本筋からは脱線しています。しかし、理系人間、地学マニアとしては、挿絵のいい加減さを見逃すわけにはいきません。せっかく地震大国に留学しているのですから、地震に関する正しい知識を身に付けてもらいたいです。

この授業、学生の頭にどれだけ残ったでしょうか。

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