外国料理

4月21日(金)

読解テキストに関連した宿題として、学生自身の国の料理で、外国料理をアレンジしたのものを探してくるというのがありました。マクドナルドやケンタッキーが自国風に味付けされているとか、寿司のネタに日本ではありえないようなものを入れているとか、想像できそうなできなさそうな答えが寄せられました。

40年近く前のことですが、私は新入社員として山口県にある工場に配属されました。その工場の食堂のテーブルに、キムチの素という瓶が置かれていました。普通の白菜の漬物にそのキムチの素をかけるだけで白菜キムチができあがるという、オレンジ色のドロッとした半液体の調味料です。

当時は韓流ブームのはるか前でしたから、東日本で生まれ育った私には、キムチはなじみのない食品でした。工場の人たちが、しょうゆの代わりにそのキムチの素を白菜に漬物にかけて、ごく当たり前に食べているのを見て、さすが山口県は韓国に近いだけあるなあと感心していました。

なんとなく好奇心が湧いてきたので、ある日、少し勇気を出して即席白菜キムチを作って食べてみました。これが辛いのなんのって。食べ物を残すのは嫌いですから小皿の白菜キムチをどうにか平らげましたが、二度と手を出すまいと強く心に誓いました。同時に、こんなものを毎食口にしている韓国人の味覚を大いに疑いました。

その数年後、ソウルまで1万円足らずで行けるというチケットが出たので、初めて韓国の土を踏みました。あれ以後キムチの素には一切手を出していませんでしたが、せっかく本場に来たのだからと、食卓の上に合ったキムチを、ほんの一口、記念に味見しました。

口に入れた瞬間辛さが舌を刺激し、失敗したと思いました。しかし、そのうちに辛さ以外の味が広がりだしました。これをおいしいというのであれば、韓国人の味覚って繊細じゃありませんか。あのキムチの素で満足している日本人の方がどうかしていると思いました。

ネットで調べると、現在、某大手食品会社がキムチの素を出しています。それがあのキムチの素なのかはわかりませんが、キムチが一般化した今は、きっとおいしくなっているに違いありません。私がこの読解の宿題をするなら、この話を書きます。

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