ビザを更新されました

10月25日(火)

「先生、聞いてくださいよ。受身、大変でした」と、午前の授業が終わった後、M先生が報告兼愚痴りに来ました。このクラスは、先週、私が文法の復習ということで、受身の授業をしました。導入ではなく復習ですから、“私は先生に褒められました”みたいな直接受身をはじめ、“電車で足を踏まれました”“雨に降られて風邪をひいてしまいました”のような、少々特殊な受身まで一気にやりました。M先生は、それを受けて、話させたり文を書かせたりという演習をすることになっていました。

「受身の文って言ったら、Eさんがいきなり“私はビザを更新されました”ですよ」。そりゃあ、教師としちゃあ目が点になりますねえ。「Cさんは“窓を開けられました”って言うから、“どんな状況ですか”って聞いたんです。そしたら黙っちゃって…」。掛け値なしで大変な授業だった様子が見えてきました。

どうやら、私は油断していたようです。復習だからと広く浅く扱ったのが間違いでした。直接受身だけに絞るべきでした。おそらく、このクラスの学生たちは、以前受身を勉強し、その直後のテストでは合格点を取ったけど、その後受身を使って話したり書いたりすることがなかったのでしょう。深く突っ込まなかった私の授業には耐えられましたが、ほんの少し突っ込んでみたM先生の授業では破綻をきたしてしまったのです。

ほんの少し背伸びして“東京でオリンピックが行われました”と言えば練習になるのに、“東京でオリンピックがありました”としか言ってこなかったのでしょう。“このマンガは私の国でも読まれています”じゃなくて、“私の国でもこのマンガを読んでいます”と言い続けてきたに違いありません。楽な道を歩み続けた結果が、“私はビザを更新されました”なのです。受身を使わなくても話が通じるからって許してきた我々教師もいけません。

明日は、このクラスで使役の復習です。

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