いまだに

7月28日(木)

昨日のこの稿で取り上げたEさんが、授業後に進学相談に来ました。志望校のリストを送ってもらっていたので、朝のうちに、Eさんの成績でそれらの大学に合格できる可能性をはじいておきました。

Eさんが第1志望だと言った大学は、かなり厳しいです。面接でよほど上手に自分自身を売り込まない限り、逆転はできないでしょう。Eさんは、自分と同じくらいの学力の友人が合格したと言っていますが、あてにはなりません。合格した人の実力を低く見積もって、この程度なら自分も…と思おうとするのは、受験生に共通した心理です。そこを目標に努力し続けるなら有益ですが、“あいつさえ合格したのだから、私は楽勝”という心理になってしまったら、百害あって一利なしです。

その大学の独自試験には、口頭試問があります。これは、発話力に自信のない発話力に自信のないEさんにとっては悩みの種です。私が例題を出すと、Eさんはもどかしそうな顔をしました。母語では答えられますが、日本語は一言も出てきません。このもどかしさをどうにかするために、明日から授業の会話の課題に真剣に取り組んでもらいたいものです。

第2志望の大学は、出願時に1200字の志望理由書を提出します。EさんはEJUの記述問題ぐらいの長さまでの文章しか書いたことがありません。1200字と言えばその2倍以上ですから、とても心配しています。何から手を付けていいかわからないと言いますから、搾理由書のネタのありかを教えてあげました。

もう1校、Eさんは日本大学工学部を志望校にしていました。Eさんは、純粋に自分の勉強したいことが勉強できそうなので選んだのですが、日本大学工学部が東京や千葉ではなく、福島県にあることには全く気付いていませんでした。私がそれを指摘すると、「福島? この大学は原発のそばにありますか。そこに住んでも病気になりませんか」と聞いてきました。日本大学工学部がある町は、原発から60キロほど離れていて、原発のそばに住んでいた人たちが避難してきたところだから放射線に関する心配はないと教えてやりました。志望校リストから抹殺しなかったところを見ると、多少は安心したようです。

Eさんを笑うことはたやすいですが、Eさんの発想の方が世界標準に近いのです。原発再開派のみなさん、この点を忘れないでくださいね。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です