10月27日(火)
進学コース理科系のCさんは中級クラスですが、あまり中級っぽい話し方ではありません。内容のあることを話そうとしても、たどたどしさが最初に出てしまいます。単文を組み合わせて自分の考えを伝えようとしているので、日本語教師の私なら真意がある程度理解できても、入試の面接官が相手だったら、果たしてどうでしょう。
Cさんは、第一志望としてR大学を目指しています。R大学は難関校の一つですが、今までの合格者の傾向を見ると、日本語力の高さよりどれぐらい理科が好きかを見ているように思えます。2年前に入ったZさんも今のCさんと同じくらい日本語が下手でした。でも、理科の話になると目の色が変わり、表情が生き生きとし始め、そのつたない日本語に必死に耳を傾けると、実にしっかりしたことを言っているのです。その翌年のWさんも同様で、普段はどこかつかみどころがないのですが、自分の夢を語るときは、どことなく精悍な顔つきになりました。
Cさんは、残念ながら、今のところ、その先輩たちの域には達していません。私はCさんとの付き合いが長いですから、言いたいことがなんとなく響いてきます。「なんとなく」では、入試は通用しませんから、それが自然に出てくるように、そして、ZさんやWさんのように熱意がほとばしり出るような話ができるように、これから鍛えていかなければなりません。
もう一人、Dさんも理系志望の学生で、こちらはS大学の志望理由書で詰まっています。どこで仕入れたのか、妙に専門的な話をし始めています。ZさんやWさんのようなひたむきさよりも、自分を大きく見せたいのか、Dさんからは知識をひけらかそうとするにおいが感じられます。本当に専門的ならともかく、私程度の者でもひねりつぶせそうな知識ですから、面接官にちょっと意地悪されたらひとたまりもありません。それに、入学前に専門をキメ打ちすぎると、いい勉強ができません。何でも一旦は受け止めて味わって、その中から真に自分にあった分野を深めるってぐらいの気持ちが必要です。Dさんの理科を勉強したいという純粋な気持ちが表に出るように、志望理由書は全面的に書き直させました。
CさんやDさんの理科を愛する気持ちを伸ばしてくれる大学に進学させてあげたいです。