続・あるgive up

5月31日(火)

昨日の続き。

SさんにはEJUの数学は受験しなくてもいいと言いました。数学が苦手で、数学の勉強に苦痛を感じるような人が無理して数学の教科書を開いたところで、我慢しながら数学の講義を聞いても、本人のためになる勉強はできません。私にはそういう学生に数学のすばらしさ、面白さを伝えられるだけの力量がありませんし、週に90分の受験講座だけでは結果につなげられません。

しかし、たとえ文学部に進むのであっても、数学を勉強する必要がないとは思いません。サイン、コサイン、タンジェントや、2次方程式ばかりが数学ではありません。数学とは論理学であり、論理学はすべての学問に共通してその基礎をなす学問です。重なりや抜け落ちがないように場合の数を求めたり、公理や定理を組み合わせて図形問題を解いたり、数学的帰納法を用いて式を証明したりということを通して、自分の研究の進め方をより確かなものへとしていくのです。

AIを理解するにも、論理の組み立て方がその基礎となります。Sさんのような若い人たちは、世に出ようと思ったらAIを使いこなすことが必要不可欠です。AIの開発は専門家に任せておけばいいですが、ユーザーとしてAIに接する際に、AIそのものの知識ではなく、その作動原理、思考回路が思い描けるだけの理解力は必要です。その理解力を培うのが、数学の勉強なのです。

今は、大学に入る、いわば方便として、数学を捨てます。でも、大学に入ったら、将来を見据えて、受験勉強ではない数学を勉強してもらいたいです。

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