3月5日(木)
「Tさんって、例文が上手ですよね」とS先生が言いました。「勉強した文法項目をちょうどいい場面に当てはめてますから、感心させられます」と、Tさんの例文にほれ込んでるご様子。
「いやあ、気の利いた例文はみんなスマホを使って拾ってきてるんですよ」と私。「え、そうなんですか。いつの間にスマホをいじってるんですか」「すきあらばすぐですよ。板書している最中とかほかの学生の質問に答えてるときとか、こちらが目を向けていないときはほとんどじゃないですか」「全然気がつきませんでした」「そりゃ、Tさんだってバカじゃないですから、教師に見つかるような使い方はしませんよ」
Tさんの例文はできすぎのところがあります。どう考えても本人の実力以上の語句が使われていたり、あんたこの場面想像できるのって言いたくなるようなすばらしい場面設定だったりします。そして、手がいつも机の下なんですね。何より、一字一句違わぬ例文が、席が遠く離れたMさんからも出されていたのが動かしがたい証拠です。
そのTさん、つい先日のテストでは短文作成の問題がボロボロでした。それが大きく足を引っ張り、クラスで最低の成績に沈みました。そばらしい例文は、やっぱり付け焼刃でした。
Tさんもスマホ中毒だと思います。スマホを頼ればなんでも問題は解決できると思っているのでしょう。いや、授業中であろうともいじらずにはいられないのかもしれません。いじるついでに例文のネタも見ちゃっててるに違いありません。ヘタをすると、いじってるという意識すらないんじゃないかな。
Tさんは極端だとしても、各教室に1人や2人、あるいはもっと多くのTさんがいます。禁止するだけではどうにもならない山が動いています。