はんそう現実

12月23日(木)

期末テストが終わったら、教師はまず採点です。私は自分の受け持ちレベルの読解を担当しました。

テスト前日に問題を見せられた時、漢字の読み方を答える問題がありました。私は読解のテストに漢字の読み書きの問題は出しませんから、その問題が何となく引っ掛かっていました。でも、問題になっている単語は、どれも本文のキーワードと言ってもよかったですから、“ま、しょうがないか”というくらいの気持ちでいました。

最初に採点した学生は、「仮想」を「はんそう」と読んで×になりました。どうしてこんな間違いをしたのだろうと思いながら次の学生を採点したら、また「はんそう」でした。まさかカンニングではと思いましたが、他の問題の答えが違いすぎます。こんな調子で「はんそう」が次々と出てきました。この問題、学生たちには意外と荷が重かったようです。

どうやら、「仮」を形成文字と判断して、「反」の音読みを書いたようです。中級ともなればそのぐらいの知恵は働きますが、今回はそれが裏目に出ました。「仮」は確かに形成文字ですが、その音符は旧字体の「假」のつくり、「叚=カ」なのです。漢和辞典を繙くと、「叚」は被せる、覆うという意味があると書かれていました。これににんべんを付けると、「仮面をかぶる」とか「うわべを繕う」とかとなり、「仮」につながるというわけです。

読解の授業では、予習の1つとして、本文に出てくる漢字の読み方も調べてくることになっています。学生たちは「仮想」も調べたはずなのですが、記憶に残っていなかったのでしょう。いや、読み方は「はんそう」と頭から決め込んで、調べなかったとも考えられます。「はんそう」のほうが「かそう」より多かったのですから。

こちらも反省点があります。“「かそう」ぐらい、ちょっと調べりゃわかるだろう”と思ってはいけませんでした。学生を疑ってかかるわけではありませんが、きちんと確認を取ることが、学生に対して本当の意味で親切だったのです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です