変心

10月21日(木)

「はい、じゃあ、15分休みましょう」と休憩を宣言するや否や、Sさんがやって来て、「先生、昨日の漢字テスト、今受けてもいいですか」と、追試を受けさせてくれと言うではありませんか。他の学生なら驚くほどのことではありませんが、Sさんが自ら進んでテストを受けようとするなんて、にわかに信じがたいことでした。

先学期のSさんは、興味のあることしかしようとしませんでした。その興味とは進学であり、進学に直接かかわりのあること、例えばEJUの勉強以外は、無視を決め込んでいたのです。平常テストは、まともに勉強したとは思えないような成績でした。オンライン授業中は、出席を取るとき以外、指名してもろくな反応が返ってきませんでした。おそらく授業とは無関係な問題集か何かに取り組んでいたのでしょう。ブレイクアウトセッションには、参加したためしがありませんでした。授業で扱うような話題について話す気などなく、グループ内に存在しているだけというありさまでした。

それが、先学期は一言もしゃべらなかった自己紹介で、ホワイトボードの前に立って1分ぐらい自分を語っていました。指名されても、的外れな答えをすることがなくなりました。ペアの会話練習では、ちゃんと相手の目を見て話していました。そして、“テストを受けてもいいですか”です。確かに、テストの日に欠席したのは褒められたことではありませんが、自分でその後始末をしようとしたのですから、大躍進です。

何がSさんをそうさせたのかよくわかりませんが、この前向きな精神状態をキープしたまま受験に臨んでもらいたいです。教師としては、うれしいやら、どこでこけるか気が気ではないやら、おっかなびっくり対処しています。この前向きな精神状態のままで、合格まで突っ走ってほしいと切に願っています。

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