11月27日(金)
A:「これ、おいしいね」B:「ちょっと苦くてね」
さて、Bさんはおいしいと言っているのでしょうか、おいしくないと思っているのでしょうか。
上級クラスでこういう問題をやったら、学生たちの意見はほぼ半々でした。Bさんは「ちょっと苦くておいしいね」の「おいしい」を省略しているわけですが、半分の学生はそれを理解していなかったということになります。
これはJLPTの練習問題でしたが、コミュニケーションの問題でもあります。それができなかった学生は、現実の生活において、日本人とのコミュニケーションがうまくいっていないおそれがあります。文法や読解や漢字や、その他いろいろな問題が解けるようになることも大切ですが、コミュニケーションに齟齬が生じていたら、生活の基盤が脅かされかねません。
留学生入試には面接がつきものですが、これはコミュニケーション力のテストでもあります。どんなに立派な志望理由を述べ立てても、コミュニケーションが取れないと感じた学生は落とすと明言している大学もあります。自分の気持ちや考えを相手に伝えるにとどまらず、相手の言わんとしていることをきちんとつかむ能力も見られます。そう考えると、このクラスの学生の進路が不安になってきました。
大学などを卒業した後、日本で就職したら、日々「ちょっと苦くてね」です。この手の会話が半分しかわからなかったら、変なガイジンの壁は突破できません。聴解の前にやった読解の教材が、たまたま言語表現に現れる日本人の精神性に関するエッセイでした。学生たちは、その2つを組み合わせて、妙に感心している風でした。
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