11月4日(水)
日本語学習者向け教科書の著者は、多くの場合、文科系出身の方です。そのため、理系人間の目で見るとおかし気な記述が見られることもあります。でも、ほとんど、普通に日本で暮らしていくには支障がない程度の怪しさですから、スルーしてしまっても構わないでしょう。マニアが気付いてニヤッと笑う程度です。
しかし、中には見逃すわけにはいかない間違いもあります。ある教科書の単位を紹介するコラムの、「エネルギー・熱量」というくくりの中に“バレル(石油)”とありました。石油とわざわざ注釈をつけている以上、間違いなく石油の取引に使われる“barrel”でしょう。1バレル=159リットルという、エネルギーではなく体積の単位です。同じくくりにあるジュール、カロリーとは明らかに違います。1カロリー=4.2ジュールという換算はできますが、1バレル=××ジュールなどと変換することは、物理学的に不可能です。石油はエネルギー資源だから「エネルギー・熱量」グループに入れてしまったのでしょうか。
この教科書の同じセクションには、「消費税の比率が上がる」という例文があります。この例文を素直に受け取ると、「国の税収に占める消費税の割合が上がる」という意味になると思います。しかし、英訳は“tax rate”となっていますから、比率ではなく税率でしょう。比率は、「縦横の比率」のように“A:B”の形で表せるもの、「外国人留学生の比率」のように全体に対する割合、英語で言えば“ratio”です。去年の10月に上がったのは、消費税の比率ではなく税率です。その結果、家計支出に占める消費税の比率は上がったでしょうが。
ここに挙げた間違いは、いずれも大勢に影響がないものです。この教科書の価値を損なうほどのものではありません。でも、だからこそ、違う角度から見てもらって、間違いをなくしておいてもらいたかったです。
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