よくそうにつかう

6月16日(火)

先週に引き続き、中級でもできるクラスの聴解の授業をしました。そのセリフの中に、「~浴槽につかることが好きな人が~」ということばがありました。学生たちは、これを「~浴槽につかうことが好きな人が~」と聞き取ってしまいました。精神を集中させて聞かせても、全学生が「浴槽につかう」と聞き取るのです。

いかにできるとは言っても、中級の学生にとって“つかる”は未知の語彙でしょう。一方、“つかう”は初級の語彙で、今まで数えきれないほど書いたり話したり聞いたり読んだりしてきたはずです。ですから、“つか…”と耳に音が入ってきたら、“…”に当てはまる音は“う”であっても“る”など想像もできないに違いありません。学生たちの耳には確かに子音rが届いて鼓膜を震わせているはずなのですが、脳はそのr音を無視して情報処理してしまいます。

知らない単語は聞き取れないという典型例です。「浴槽」だって、学生たちには聞いてすぐわかる単語ではありませんから、「~浴槽につかうことが好きな人が~」は意味不明なセリフだったことでしょう。絵を描いて、これが「浴槽につかる」だと説明し、もう一度聞かせたら、ようやく学生たちは眉を開きました。

日本語は語彙が多い言語です。「浴槽につかる」だって、「風呂の中に入る」とか「お湯に浸る」とか別の言い方もあり得ます。それを網羅するには、ライシャワーさん並みに、それこそ日本文化にどっぷりつからねばなりません。入試までの短時日でそこまで至るのは不可能です。でも、可能な限り引き上げてやりたいと思っています。

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