格調低く

5月19日(火)

先週発表された6月のEJUに続き、7月のJLPTも中止になりました。たとえ近々緊急事態宣言が解除されても、7月初旬に大勢を集めて試験をするというのはリスクが大きすぎます。まだまだ日本中が病み上がりみたいなものです。無理は禁物です。

そういう意味で、中止は妥当な結論だと思います。しかし、妥当じゃないのはその伝え方です。

2020年7月5日(日)に実施を予定しておりました2020年第1回日本語能力試験は、これまで試験実施に向けて準備を進めてまいりました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の現状は依然予断を許さぬ状況にございます。このような状況下で試験を実施することは、受験者の皆様の安全確保あと新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点からも非常に困難であり、やむを得ず本試験の実施を中止することといたしました。

これは、JLPTの中止を受験生に伝える通知文の一部です。漢字にすべてふりがながついていた(この稿では省略しました)ということは、日本人向けではなく外国人向けです。しかし、この文章が理解できるのはN1受験生でも少ないのではないでしょうか。見出しが付いていますからJLPTが中止になったことは伝わるでしょうが、じゃあこの文章は誰のために書かれたのでしょう。

昨日、日本語教師養成講座で「やさしい日本語」を取り上げました。JLPT中止のお知らせはその対極にあると言ってもいいくらいの文章です。これを「やさしい日本語」にするにはどうしたらいいかという練習問題に使えそうです。まあ、このお知らせはワンクリックで英文が見られますから大勢に影響はないと、実施団体の日本国際教育支援協会は踏んでいるのでしょう。

こんな格調高い文章は、日本語がまだまだの外国人に情報を伝えるには向いていません。N5はともかくとして、N4ぐらいの人たちにも理解できる書き方をしなければならないと思います。と言いつつも、私も留学生相手に格調高い文章を書いてしまうことがあります。それは、数学や理科の問題の模範解答です。学生にわかりやすくと思って書き始めるのですが、いつの間にか難しくなっているのです。半世紀近く昔の学生時代にたたき込まれたパターンから抜け出せません。言葉を緩めると、解答の価値が下がるような気がするのです。JLPT中止のお知らせを書いた人も、同じ感覚だったのでしょうか。

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