1月22日(水)
学生たちはしわぶき1つせず黙々と卒業文集の清書をしています。専用の原稿用紙に黒のフリクションではないボールペンで書くのですから、失敗は許されません。だから、おちゃらけた態度にならないのはわかりますが、これほどまで集中するクラスは珍しいです。
先週の水曜日に下書きを書いてもらって以来、昨日までかかって添削しました。日本の生活の苦労、勉強ができなかった苦しみ、新しい友達ができた喜び、未知の世界を垣間見た驚き、将来の夢、何年か後の自分への手紙、来日直前の自分へのアドバイスなど、実にバラエティーに富んでいました。
どの学生も何らかの形で挫折を味わい、それを克服して、今、こうして卒業を目の前にしているのです。来日したばかりのころに比べれば、何倍も強くなったはずです。だからこそ、かつての自分にアドバイスができ、将来の自分に「初心を忘れるな」なんてメッセージが送れるのです。
緊張気味の表情で原稿用紙に向き合っている学生を眺めながら、この学生たちと同時期に入学して、すでに帰国した学生たちのことを思い出しました。日本の生活になじめなかったり、日本語の壁が乗り越えられなかったり、誘惑に負け続けたり、健康を害したり、志半ばで帰国した学生たちが敗北感一色になっていないことを祈るばかりです。
今ここで清書に集中している学生たちも、これがゴールではありません。4月以降、私学したら、今まで以上の試練が待ち受けているに違いありません。その試練を切り抜けるだけの基礎学力と常識と精神力を、私たちは授けてきたつもりです。顔を伏せてボールペンを動かしている学生たちを、卒業後も陰ながら応援していきます。
日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ