タッシーとやっそく

12月9日(月)

月曜日の選択授業は大学入試の過去問です。今週は、難関とされているG大学、その中でも特に難しい文学部の問題を取り上げました。

その最後に、「自分は正しいと思っていた日本語が間違っていたことに気づいた経験」について述べる問題がありました。この問題には「正解」はありません。自分の日本語をどれだけ見つめているか、その見つめた結果を文章で表現するだけの力があるかを見ようとしているのでしょう。

Zさんは、“タクシー”“やくそく”は、“タッシー”“やっそく”だと思っていたそうです。これは、日本語の特徴の1つである母音の無声化にもかかわることで、非常に興味深い答えです。kやsやtの子音に挟まれた母音uやiは、非常に弱く発音されます。“タクシー”“やくそく”はまさにその例で、“taksii”“yaksoku”に近い発音となり、“タッシー”“やっそく”と聞こえても不思議はありません。

“三角形”“洗濯機”はを几帳面に“さんかくけい”“せんたくき”と発音する人は少ないのではないでしょうか。“さんかっけい”“せんたっき”と発音する人の方が多いと思います。少なくとも東京の人はそれに近い発音をしていると思います。

かつて、タモリが笑福亭鶴瓶をからかうとき、“タクシー”“ネクタイ”を、ことさら“ク”を強調していました。関西ことばを使う人たちは、そういう発音をすることが多いです。学生は文字に書かれた通りに発音しようとしますから、“タクシー”や“やくそく”だけ妙に関西ことばっぽく聞こえてしまいます。教師も、ディクテーションの時など、学生に“く”を確実に聞き取らせようと、東京人としては不自然なほど強く発音することが多いようです。

いずれにしても、“タッシー”と“タクシー”をきちんと聞き分けて、こういう場で述べるという点はZさんの日本語力の高さを示していると言ってもいいでしょう。

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