誰の志望理由書?

7月21日(火)

W大学の出願締め切りが迫り、出願予定者は大忙しです。いや、出願予定者を受け持つ教師のほうが学生本人以上に忙しいかもしれません。学生は自分のだけ考えればいいですが、教師は自分が受け持っている学生全員の面倒を見なければなりませんから。国の高校から取り寄せる書類や機械的に埋めていけばいい書類は、学生自身でもどうにかなりますが(というか、学生自身以外でどうにかできる人はいません)、志望理由書だけはそう簡単にはいきません。

YさんもWさんも私を忙しくさせている学生たちです。それぞれ書き上げては教師のチェックを受けて、ということになりますが、それが集中するこちらは結構な仕事量になります。YさんもWさんも、いまひとつ文章に切れがありません。それぞれ自分独自の決めぜりふがないんですね。これは誰でも書けるよねっていうことか、これと志望学科がうまくつながればすごいんだけどっていう内容とか、どうも詰めが甘いのです。

多くの日本語学校の先生方が、私と同じようにW大学に出願する学生の指導をしておいででしょう。教師の力に大差がないとすれば、合否の分かれ目は、結局は志願者本人実力に負うところが大きいというわけです。私が想像力をたくましくすれば、あるいは不合格になるはずの学生を合格させることもできるかもしれません。火のないところに煙を立てるがごとく、単に憧れでW大学と言っている学生の志望理由をでっち上げることだってできます。しかし、そうまでしてW大学に入ることが学生自身の幸せにつながるとは思えません。

わたしたちは進学のお手伝いはしますが、主体的に動くのはあくまで志願者本人です。志望理由のタネを持ってくれば、それをまいて肥料をやって、芽を出し葉を出すぐらいまではどうにかしてあげられるかもしれませんが、花を咲かせるのは学生自身の手によってです。それ以上手助けしたら、誰が大学に入るかわからなくなってしまうではありませんか。

W大学が第一陣で、この後いろいろな大学の出願が続きます。戦いは始まったばかりです。

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