8月30日(金)
Kさんは先学期の新入生で、私のクラスでした。シャキッとしたところがなく、特別な理由もなく遅刻したり欠席したりし、来ても筆記用具を持ってこなかったり、持って来てもろくにノートを取らなかったり、成績といえば、テストでかろうじて合格点を取り、どうにか墜落は免れるという超低空飛行でした。テストや作文の字は汚く、読むのに一苦労しました。授業で指名しても、ぼそぼそと答えるだけで、やる気とか元気とか覇気とかいうものとは無縁の学生でした。進級させるかどうかさんざん迷ったのですが、数字的には合格ですから、目をつぶって上げてしまいました。
そのKさんが、お昼から行われた専門学校フェアに姿を現しました。まず、自分から進んでこういう場に現れたことに驚いてしまいました。進路について前向きに考え始めたのなら、大きな進歩じゃありませんか。そして、2校のブースで、それぞれかなり長い時間、話を聞いていました。専門学校の方に一方的に話されて理解できるのかなあと心配になりましたが、どちらのブースでも姿勢が前のめりになっていましたから、何かに引き付けられているのだろうと思っていました。いや、そうだと信じようとしていました。
学生たちが帰った後、Kさんと話していた2校の方に、ご挨拶も兼ねて、お話を伺いました。「…Kという学生がお邪魔したかと思いますが、いかがでしたか」「あーあ、Kさんですね。真剣に話を聞いてくださいましたし、こちらの方面にとても強い興味をお持ちのようでしたし、何より質問が的を射ていましたね。本気で考えていることが伝わってきました。先生からも是非当校にと薦めていただけませんか」。え、あのKさんが的を射た質問? とても信じられませんでしたが、外交辞令ばかりだとは思えませんでした。
目指す地点が明確になると学生は強くなるものですが、Kさんも自分の将来像が描けてきたのでしょう。Kさんの進学する上での最大の弱点は出席率です。86%と聞いた専門学校の方は、来年3月まで頑張ればいい数字になると励ましてくださいました。
来週は9月。専門学校の出願がぽつぽつ始まります。