6月5日(水)
日本語をゼロから勉強し始めていくと、何か所か大きな山というか崖をよじ登らなければならないところがあります。たとえば、みんなの日本語で言えば14課、て形が出てくるところです。「ます」に集約されていた活用が、動詞本体に及びます。その後、続々と活用形が現れ、学習者は、まず、ここでふるいにかけられることになります。
今、私が受け持っているクラスは、みんなの日本語が終わり、中級への橋渡しの授業をしています。中級に上がれない学生の大半が、ここで挫折するのです。中級になると教科書・教材が親切でなくなり、“わからない”を乗り越えて突き進む破壊力みたいなものが求められます。みんなの日本語には各国語の文法解説書がありますが、中級にはそんなものはありません。日本語を日本語で理解しなければなりません。
今、ここで戸惑っているのがTさんです。わからない言葉を辞書で調べて理解しようとするのは感心しますが、辞書に頼りすぎるきらいがあります。「飲みたいなあ」の「なあ」まで調べてしまって、辞書に載っていないから理解のしようがないとなってしまうのです。また、日本語で「デザイン」といえば、色とか形とか模様とか主に外観についてですが、英語の“design”は、設計やら製造工程やら、「デザイン」には含まれない意味も含みます。ところがTさんは、「デザイン」を“design”だと思い込んで一歩も動かないので、誤解が解けません。
これから期末テストまでの間に、日本語を自国語に置き換えて理解するという態度を改めないと、たとえ成績的には中級に上がれても、中級の文法も読解も理解できないでしょう。未習の単語や文法も、わからないでは済まされません。今の勉強法も根本から変えなければなりません。さて、Tさん、変身できるかな。