1月29日(火)
私を取り巻く授業の都合がうまい具合に回って、午前中は授業がありませんでした。ここぞとばかりたまっていた仕事に取り掛かったのですが、どれもこれも、やっているうちに顔つきが渋くなっていくのが自分でもわかるというようなパッとしないものばかりでした。
午前の授業が終わり、最初に私のところへ来た話は、先週末から休んでいる学生がまた休んだという報告でした。頭を抱えているところへ、Sさんが私を呼び出しました。「はい、お待たせしました。どうしましたか」と、また難問を持って来られたのではないかと少しびくつきながら声をかけました。「先生、H大学に合格しました」「ええっ、よかったですねえ。おめでとう」「ありがとうございます」と、今月でSさんの担任は7か月目ですが、今まで見せてくれたこともないような笑顔を輝かせていました。Sさんが進学するH大学のキャンパスは都心から少し離れたところにありますが、都心のど真ん中の大学に進学することになっているYさんにそこを突っ込まれても、ニコニコしながら受け流していました。
未成年のSさんにとって、ここまでの受験は初めて襲い掛かられた世間の荒波であり、決して順調だったわけではありません。先学期あたりはずっと不機嫌な表情をしていました。留学生を積極的に受け入れると言いつつも、出願にしても合格後の入学手続きにしても、外国人留学生に対してフレンドリーとは言いがたいのが実情です。角を曲がるたびに障害物に出くわしたというのが、Sさんの偽らざる心境かもしれません。それだけに、この合格がひとしおうれしかったのだと思います。
日曜日のニュースで、国立大学が入試問題の出題意図と模範解答を公表すると伝えられていましたが、留学生入試は問題すら公表されない現状が続くのではないかと危惧しています。M先生によると、日本語学校に力がなさ過ぎるから文科省や大学からなめられているからこうなっているということです。
それはともかくとして、オリンピック選手や観客へのおもてなしの気持ちを、ほんの少し留学生にも向けてもらえないだろうかと、最近いつも思っています。