断髪式

1月23日(水)

1:30に受験講座開始のチャイムが鳴ると同時に、Sさんが化学の教室に入ってきました。思わず目が釘付けになってしまいました。昨日A大学の面接練習をした時には背中の真ん中へんまであった髪が、ばっさり切られていたんです。若干オタクっぽい感じだった顔つきが、耳をすっきり出して精悍になりました。Sさん自身もちょっぴり気になるのか、いつもより髪に手をやる頻度が多いように見受けられました。

Sさんの髪は長かったですが、きちんとまとめられていましたから、むさ苦しいとか無精ったらしいとか、不潔感が漂うようなことはありませんでした。でも、髪を切ったほうが、Sさんの人柄の良さがストレートに感じられます。おそらく、面接官に与える好感度も上がることでしょう。

「外見ではなく中身だ」とはよく言われますが、「人は見た目が9割」とか「100%」とかという本やテレビ番組もあります。そこまでいかなくても、外見の第一印象でその人の人間性まで推し測られてしまうというのが、現実の人間関係です。Sさんも、それは意識していたことでしょう。

私だって、新学期の初授業で受けた印象で、その学生の人となりを決め付けてしまうことがあります。そして、それを修正するには、意外と時間がかかるものなのです。わずか10分か15分の入試面接では、修正不能かもしれません。どんなにすばらしい志望理由や学習計画や将来設計を語ったとしても、昨日までのSさんだと眉につばをつけられてしまったかもしれません。

授業後、Sさんに話しを聞いたら、日本へ来て初めて髪を切ったのだそうです。そして、その髪を寄付したそうです。SさんがA大学に入学する頃には、Sさんの髪で作られたウィッグをかぶった人が、どこかの町を歩いているかもしれません。

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