引退

1月16日(水)

横綱稀勢の里が引退してしまいました。先場所も今場所も1勝もできなかったのですから、また、左腕のけがが完治する見込みも薄いのですから、やむをえない選択だと思います。横綱昇進の場所に負傷して以来、満足な相撲が取れなかったのが残念だったのは、誰よりも稀勢の里自身です。不完全燃焼の引退じゃないかと思います。

もう1つ不完全燃焼の原因を言わせてもらうと、師匠に恵まれなかったことではないでしょうか。稀勢の里は元横綱隆の里が起こした鳴戸部屋に入門しました。現在の稀勢の里の師匠である田子の浦親方(現役時は「隆ノ鶴」)は、鳴門部屋では先輩後輩の関係でした。いや、稀勢の里は番付面では隆ノ鶴を追い越してしまったので、隆ノ鶴のほうが稀勢の里を上位者として一歩下がった形で対していたかもしれません。いくら10歳年長とはいえ、同じ釜の飯を食っていた、番付上では下位者を心の底から師匠と思えたのかなあと思っています。

隆ノ鶴が稀勢の里の師匠になったのは、元横綱隆の里の鳴戸親方が急逝したからです。しかも鳴戸親方が亡くなったのは、稀勢の里が大関に昇進する直前です。精神的な支えを必要としたときに、最も頼りとなるはずだった人が消えてしまったのです。稀勢の里は、大関になってから伸び悩みます。もし、隆の里の鳴戸親方が生きていればと思うことが幾度もありました。そして、ワンチャンスでつかんだ横綱昇進。そこまではよかったのですが、その後苦境に立たされた稀勢の里を支えるには、前頭8枚目が最高位の田子の浦親方では役者不足だったことは否めません。隆の里の鳴戸親方だったらここまでボロボロになる前に、稀勢の里に何かしてあげられたんじゃないかと思わずにはいられません。

私も「稀勢の里」を生んでいないか、とても気になります。

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