10月23日(火)
授業後、Tさんが志望理由書を見てほしいと持って来ました。頭痛がするか吐き気を催すような志望理由書ばかりを見てきた目には、一読で内容がすっと理解できるTさんの志望理由書が神々しくさえ見えました。文法的な手直しは、助詞をわずかに訂正する程度で終わりました。文法チェックに加えて、Tさんは字数制限に合わせるために200字ぐらい削ってほしいと言います。ところが、Tさんの文章には無駄がありませんから、なかなか削れないのです。一部の言葉を置き換えて数文字ずつでも削りましたが、積もるほどのちりにはなりません。
こうなると、隙のない文章というのも考え物です。試合前のプロボクサーのごとく、十二分に筋肉質の体から無理やりに脂や水分を絞り出すようなものです。ですから、字数を減らすには文章の骨格から抜本的に見直す必要があります。でも、文章の骨格に手を入れると、Tさんの志望理由書ではなく、私の創作になってしまいかねません。そんなことまで考えると、かえって頭痛に吐き気の志望理由書よりも厄介にすらなってきます。
どうにかこうにか赤を入れてTさんに手渡したところで、私は受験講座の時間が来たのでタイムアウト。受験講座の合間にたまたま顔を合わせたTさんに聞いたところ、それでもまだ100字ぐらいオーバーしているとか。こうなったら根性を決めて、Tさんに事情聴取して白紙の状態からつくり上げるほかないでしょう。Tさんの志望校は締め切りが迫っていますから、明日は腰も腹も据えて取り掛かることになるかもしれません。