6月17日(水)
タイトルにつられて買った「一千兆円の身代金」(八木圭一、宝島社文庫)というミステリーを、つい先日読み終えました。政界の実力者の孫が誘拐され、一千兆円の身代金が政府に要求されたというところが物語の起点です。一千兆円とは日本の財政赤字額であり、要するに、誘拐犯は放漫財政のツケを若者世代に回すな、それをこしらえた世代で処理せよと訴えたかったのです。
これ以上書くとネタばらしになってしまいますから控えますが、公職選挙法が改正され、選挙権が与えられる年齢が18歳に引き下げられたというニュースを聞いて、まっ先にこの本のことを思い浮かべました。本の中では、誘拐犯の要求は若者の間で歓喜をもって支持されました。もちろん、要求された側は容易に応じるはずがありません。選挙権が18歳からになったことで、世代間での考え方の違いが鮮明になり、そういう問題がより活発に議論されるようになってもらいたいです。
そのためには、18歳が政治に関心を持つだけではなく、毎回投票率が低い20歳も25歳も行動を起こさねばなりません。今回の改正で、選挙権は18歳になりましたが、被選挙権は従前の通りです。ですから、立候補できる年代が適度に成熟して(成熟しすぎると我々の年代の頭と変わらなくなってしまいます)、18歳の感覚を取り込み、この国のしくみを変えていくことこそ、本当に求められていること、期待されていることなのです。
外国籍であるKCPの学生たちには、法律がどう変わろうと選挙権は与えられません。しかし、自分たちが周りの日本人の若者に影響を与え、彼らの意識、投票行動を変えさせることはできます。そのためには、彼らから一目置かれる存在にならなければなりません。勉強し、鍛錬し、自分の人間性を高めて、「留学生の〇〇さんってすごいなあ」って尊敬を集める人物になることが、自分たちにとって暮らしやすい日本を作る第一歩になるんじゃないでしょうか。ずいぶんと遠大な計画ですけど…。