7月23日(月)
Aさんは、私が持っているレベル1のクラスの学生です。先週の金曜日、私が前日の宿題を集めたところ、Aさんは提出したものの、ほとんど白紙に近い状態でした。授業中もどこか落ち着かず、だから指名しても何を答えていいかわからず、隣の学生に教えてもらってどうにかたどたどしく答える始末です。ということを担任のK先生に報告したところ、授業後に呼び出して、通訳を入れて事情聴取することになりました。
職員室へ来たAさんは、まず、宿題をやってこなかったことに対しては、宿題ノートと同じようなノートがあるので、どれが宿題かわからなくなったと言い訳しました。初日にどれが宿題ノートかはっきり示しており、授業中もそのノートを使っていますから、これは言い訳としては不成立です。
そんなことを指摘しても始まらないので、毎日授業のほかにどのくらい勉強しているかと聞いたら、最初、1時間弱と答えました。じゃあ1日40分か50分かしか勉強しないのかと確かめたら、まずいと思ったのか、学校へ行く前と帰ってきてから、1回1時間、1日2回勉強すると言い直しました。本当に1日2時間きっちり勉強していたら、授業内容はもう少しわかるはずです。
最後に、白紙に近い宿題をやってから帰るように命じました。教科書もノートも見ていいが、友達に聞いてはいけないと付け加え、図書室に送り出しました。
1時間半ほどしてから、Aさんは職員室に戻ってきました。所定の宿題のページを見ると、まだ答えがない問題がありました。ノートと教科書を出せというと、落書きだらけのノートと、買ったときのまんまに近い実にきれいな教科書が出てきました。宿題は教科書の問題をちょっとひねっただけですから、教科書のどこにそれと似た例文があるかがわかれば、あっという間にできてしまうはずなのです。でも、Aさんは教科書のどこに何が書いてあるかさっぱりわからないのです。いかに勉強していないか、1日2時間なんて嘘っぱちだということが、図らずして証明されました。
おそらく、Aさんは日本へ来てから、KCPに入学してから、これほど勉強したことはなかったのではないでしょうか。全部答えにたどり着くと、授業中にも見せたことのないさわやかな笑みがこぼれました。