2月23日(月)
私の初級クラスは意向形を勉強しました。意向形というと、いつも思い出すのは日本語教師を始めたころに教えたフィリピンからの技術研修生です。ある電機会社の現地工場から送り込まれて、日本で技術と製造装置の運転方法を学び、帰国後現地で指導的な立場になる人たちを教えていました。
お定まりのように、Ⅲグループ、Ⅱグループ、Ⅰグループの意向形の作り方を教え、「食べます」「食べよう」といった調子で変換練習を始めたときです。Rさんが、「先生、『ごります』は何ですか」と聞いてきました。「ごります」なんていう動詞は聞いたことがありません。「ごりる」「ごる」、活用して「ごります」になる可能性のある動詞などありそうもありません。
しかたがないですから、「ごりますってどこで聞きましたか」と聞くと、「イトーヨーカ堂」という答えが。それと同時に研修生たちが「ゴリヨー、ゴリヨー」とだみ声を出し始めました。要するに、彼がよく行くイトーヨーカ堂の鮮魚売り場かなんかのおじさんが「ご利用(ください)、ご利用(ください)」と呼び込みをしていたのが耳に残っていたのです。何を言っているのかわからず、でもそのだみ声がずっと気になっていたのでしょう。それが「食べます―食べよう」と結びつき、「ごりよう」を逆変換し、「ごります」を導き出したのです。
「ごります」は偉大な勘違いでしたが、それを導き出したRさんは実に優秀だったと思います。未知の日本語に興味を示し、それを記憶にとどめ、あくまで追求しようとし、授業中にヒントをつかむや質問してきたのです。KCPの学生たちにも学ばせたいプロセスです。
今日は「ごります」のような質問も出ず、「つもりです」まで進みました。