6月23日(土)
昼ごはんから帰ってきて眠気がピークに達してきた頃、「金原先生、先生と話したいという学生が来ています」と声を掛けられ、カウンターを見ると、Yさんが立っていました。
YさんはW大学の志望理由書に頭を悩ませています。物理や数学の筆記試験でいい成績を取れば志望理由書は関係なくなるかと聞いてきましたが、もちろんそんなことはありません。むしろ、筆記試験が非常によくても志望理由書がひどかったら、落とされても文句は言えません。
Yさんが書いてきた志望理由書は、ありきたりの無味乾燥の内容なしで、ダメな志望理由書の典型例として保存しておきたいほどでした。「コンピューターに興味がありますからこの学科を志望しました」「W大学は多様性がある大学ですから死亡しました」「1・2年生で基礎の勉強をして、3年生から専門の勉強をします」「将来はみんなの役に立ちたいです」…。こんな文なら、私だって書けます。
Yさんを追及してみると、どうやら深い志望理由はないようです。「有名だから」が最大の志望理由かもしれません。「日本の高校に入学して、日本人と同じ試験を受ければ志望理由書は要らなかったのに」と、冗談とも本音ともつかないことを口走っていました。実際、大量の外国人高校生を入学させ、徹底的に受験勉強をさせ、日本人の高校生と同じ試験で有名大学に送り込んでいる過疎地の高校があります。Yさんみたいな若者が増えると、日本語学校はそういう学校とも競い合わなければならなくなるかもしれません。
私は、大学に進学する前に自分の将来設計について真剣に考える機会を持つことは、非常に有意義だと思います。そういうチャンスを与えられた留学生は、日本人高校生より幸せだとも思います。Yさんには考えるヒントを与えて、月曜日にまた相談に乗る約束をしました。