5月8日(火)
朝からかろうじてもってきた空模様ですが、午後の学生たちが帰る時間帯になってついに崩れてしまいました。昨日学生が借りて行った傘が、朝から続々と戻ってきていたのですが、再び1本また1本と減りつつあります。ついさっきも、職員室の入口のドアからぬーっと手が伸びてきたかと思うと、傘立ての傘をつかんで引っ込んでいきました。その瞬間、きょろきょろっと職員室を眺め回した顔には、一抹の罪悪感とうまいこと傘が確保できたという安堵感とがない交ぜになっていました。
たぶん、一番下のレベルに入学したばかりの学生なのでしょう。傘を借りる時の表現もまだ知らないに違いありません。そう考えると、「傘を貸してください」「傘を借りたいです」などという、レベル1がもう少し後に扱う文法的に正しい表現よりも、「この傘、いいですか」みたいなサバイバル的な表現を入れておいたほうがよかったかもしれません。そうしていれば、ぬーっの学生も、一抹の罪悪感におどおどすることなく、堂々と傘を借りられたかもしれません。
でも、これは難しいんですよね。初級で妙に易しい表現を教えちゃうと、中級になっても上級になってもそこから抜け出せなくなっちゃって、聞いていて気恥ずかしくなるような話し方をするようになっちゃいます。「大丈夫」とか「だめ」とかを連発するのなんかは、その典型と言えるでしょう。
人は見た目と言いますが、同じような考え方で、言葉も第一印象で決まることがあります。どんなにすばらしいアイデアや意見も、語られる言葉の質によっては輝きを失います。「大丈夫です」よりも「差し支えありません」とか「順調です」とかという受け答えほうが、信頼感や尊敬の念を勝ち得そうな気がします。
少なくとも上級の学生には、そういう言葉遣いを身に付けてもらいたいです。