3月10日(土)
昨日卒業していったXさんが、受験勉強に使った教科書や問題集を持ってきてくれました。私が持っていない教科書でしたから、ありがたくいただくことにしました。
その教科書、正確に言うと、使おうと思って買ったけれどもまっさらのままで終わってしまった、日本の高校の教科書です。教科書は市販の参考書よりずっと安いですが、Xさんの場合、冊数が多いですから数千円に上ります。それを、手垢にまみれるどころかインクの匂いすら漂ってきそうな状態で寄付してくれました。近頃の学生(の親)はお金持ちになったものです。
そのXさん、実はおととい私のところへ進路の相談に来ました。M大学とE大学に受かったけれども、どちらがいいだろうかと聞かれました。私の感覚ではE大学だと答えたら、XさんはM大学のほうがトイレもきれいだしそれ以外の設備も整っていると、受験のときに実際に見てきた感想を述べてきました。どうやら、心の中ではM大学と決めていて、私の口からM大学という言葉を聞き、背中を押してもらおうと思っていたようです。
私がM大学よりはE大学だと意見を変えなかったので、Xさんは態度保留のまま帰りました。それから2日間周りの人に聞いたりネットで調べたりして、自分の勉強したいことを勉強するならE大学のほうがいいだろうという結論に至ったようです。それでも、E大学はトイレがくさいとか食堂が狭いとか、M大学に未練がありそうなことも言っていました。
国立大学は予算が削られ続けていて、人材や施設の充実に影響が出ているという話をよく聞きます。E大学も国立ですから、トイレにかけるお金を研究費か何かに回しているのでしょうか。貧乏な大学で裕福な学生が学ぶ――なんだか皮肉な様相を呈しています。