激務に耐えかね

11月16日(木)

Rさんは国で外科医をしていました。医者をやめて学生に戻るなど、日本では考えにくい進路です。日本で健康管理の勉強をして、そういう方面の仕事に鞍替えするつもりです。日本で働きたいですが、たとえ国へ帰ることになっても医者には戻らないと言っています。

国では、Rさんは毎日朝6時から夜11時まで手術の連続で、5人の患者さんに3時間ほどの手術を施してきました。昼ごはんは、患者に麻酔が回るまでのわずかな時間を利用して軽食をかき込むだけ、夕食はほとんど取れません。糖分不足で倒れてしまったこともあったそうです。もちろん、休日に急患の手術をすることもありました。こんなにハードな仕事なのに、給料は安く、患者やその家族からは尊敬されず、患者が亡くなってしまおうものなら遺族がナイフで刺しに来るなど、身の危険を感じることもしばしばでした。

Rさんは、日本は街の中に小さい病院があって、そこにも患者さんがいると驚いていました。Rさんの国にも街の小さな医院がありますが、多くの人は風邪をひいただけでも大学病院クラスの大病院へ行くそうです。新幹線で100キロ先の大病院まで遠征するのもざらです。そんなことをしたら、かえって悪くなるような気がしますが…。そして、Rさんが勤めていたのはその大病院ですから、並の忙しさではなかったわけです。

日本では、かつてほどではないにせよ、医者の地位は高いです。Rさんの病院のようなブラックな病院はありません。しかし、高齢化により病人は増え、少子化により医者のなり手は減るとなったら、医者の負担は増えていくでしょう。割の合わない仕事だと思われてしまえば、さらになり手が減るという悪循環にも陥りかねません。

東急田園都市線が最近よくトラブルに見舞われているのは、電設会社に社員が集まらず、技術が低下した結果だとも言われています。Rさんの話声とともに、少子化のクリティカルポイントでがけが崩れ落ちる音が聞こえてきました。空耳だといいのですが…。

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