血を飲む虫

6月9日(金)

朝、仕事をしていると、電話が鳴りました。「はい、KCP地球市民日本語学校でございます」「おはようございます。金原先生ですか。私、Yですが、えーと、名前、わからないんですが、髪が短くて、細くて、声が大きくて、メガネをかけている女の先生、いますか」

Yさんが言わんとしている先生が誰かよくわかりませんでしたが、これ以上聞いても実のある情報は得られないだろうと思いました。「うーん、いらっしゃっていないみたいですねえ。Yさん、どうしたんですか」「実は、私、今朝、学校でテストをする約束だったんですが、昨日、…日本語でなんていうかわかりませんが、小さくて血を飲む虫が私の目の上の血を飲みました。それで、今、目が大きくなりました。ですから、今すぐ学校へ行けません」

小さくて血を飲む虫――ゴクゴクやるんでしょうか。私の目の上の血を飲みました――私だったら気絶しちゃいます。目が大きくなりました――おめめぱっちりじゃなくて、その逆なのでしょう。

まぶたを蚊に刺されて腫れてしまった――Yさんのレベルなら、ここまでいかなくても、これに近いことを言ってほしかったですね。Yさんも国の言葉ならこれくらい楽勝のはずですが、日本語の語彙が足りなくて、三角形の二辺どころか四角形の三辺を回るような表現になってしまったのです。

漢字の授業で「離」を扱いました。教科書にない用例として「親離れ」を出したら、「親がいなくても大丈夫になりました」など、それなりに意味が推測できたようでした。しかし、次に「人間離れ」を出したら、ひきこもりとかオタクとか「誰とも付き合いません」「山の中に動物と住んでいます」とかという答えが返ってきました。文法の時間に受身の復習で、歯型がついた半分のリンゴの絵を見た学生たちは「リンゴを半分食べられました」と答えました。彼らのレベルならそれでもいいのですが、「かじられました」という表現も紹介しました。

このクラスの学生たちもYさんも、18日はEJUです…。

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