5月20日(土)
「東京の人口は増えていますか」「はい、最近のデータによると増えているそうです」――というやり取りをする練習が教科書にありました。この練習をした後、私が「今、日本の人口は増えていますか」と聞くと、学生たちは「いいえ、最近のデータによると減っているそうです」と模範的な答えをしてくれました。
そこで、「本当に、今、日本の人口は減っているのに、東京の人口は増えています。じゃあ、人も東京に集まる、お金も東京に集まる、何でも東京に集まることを何というか知っていますか」と聞いてみると、「……」。学生を黙らせるのはいい授業ではありませんが、私はここで“東京一極集中”という言葉を覚えてもらいたかったのです。このクラスは受験生が多いですから、これくらいは知っておいたって損はありません。また、教科書だけでいっぱいいっぱいの学生たちばかりじゃありませんから、余計なことも入れてみました。
こんなふうに、私の授業は教科書を離れてふらふらすることがよくあります。一番下のレベルの授業でも、クラスの様子を見ながら、それまでに勉強した日本語で理解できる“日本の社会”を入れます。この学校に入る前は、ビジネスパーソンが相手だったこともあり、“毎朝6時に起きます”程度の日本語力でも学習者は日本について知りたがりました。そして、それに答える授業をすると、とても喜ばれました。
ですから、私は教科書を読んだだけではわからない、インターネットでもなかなか調べがつかない、学校で勉強しているからこそ手に入れられる何かを付け加えたいのです。これが、私の授業の色だと思っています。