横綱登場

3月16日(木)

昼休み、「先生、卒業生が是非金原先生にお会いしたいと言っていますが…」と呼び出され、ロビーに出て行くと、Zさんがにっこり笑いながら「先生、お久しぶりです」と声をかけてきました。

ZさんはR大学に進学し、この4月から4年生になるか、ちょうど卒業ぐらいの計算になります。だから、「何年生になるの? それとも卒業?」と聞くと、「先生、大学やめました」と言うではありませんか。「えーっ、じゃあ、今、何してるの?」「4月から専門学校です」

もう少し正確に言うと、Zさんは大学をやめたのではなく、やめさせられたのです。犯罪に手を染めたとかそういうのではなく、留年を繰り返したためです。Zさんが進んだR大学は、私が受験生だった頃も進級基準が厳しくて大量の留年が出ることで有名でした。だから、R大学の卒業生はがっちり鍛えられた精鋭ぞろいだと高く評価されてきました。ZさんがR大学に入るとき、そういう話をして、R大学は入ってからも必死に勉強しないと卒業は難しいと強く戒めました。Zさんと同期のWさんは、この話を聞いて、R大学にも受かっていたのに、M大学に進みました。

KCPにいたときのZさんは、日本語力は「ちょっと…」という感じでしたが、理数系にはきらりと光るものがありました。何より、理科が大好きでしたから、R大学に進学したら大きく花開くのではないかと期待していました。しかし、Zさんが言うには、1年生の時から勉強が難しくてついていけなかったそうです。

専門分野がどんなに好きでも、日本語力が伴っていなかったら、やはり大学での勉強は無理なのでしょうか。Zさんにとって、R大学はレベルが高すぎる大学だったのでしょうか。R大学には今年も何人か進学します。その面々を思い浮かべると、少々不安を禁じえません。R大学以外にも、自分の実力以上の大学に進学する学生もいます。今はそういう大学で勉強できる高揚感に包まれているでしょうが、それが苦しみと後悔へと変質するのは、意外とたやすいことなのかもしれません。

専門学校に進学しなおすことをわざわざ報告に来てくれたZさんは、目標を設定しなおして吹っ切れたような顔をしていました。何より、KCP時代と同じような明るい笑顔と、大台を突破してすっかり丸くなった体つきから、前を向いて進んで(転がって?)いこうという強い意志がほとばしり出ていました。

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