1月24日(火)
稀勢の里が横綱になります。稀勢の里にとって、一番いい形で初優勝ができ、横綱昇進もつながってきたと思います。いい形とは、心理的負担がかからなかったという意味です。
稀勢の里は、これまで何度もここぞというときに星を落として、優勝や横綱昇進を逃してきました。ところが今回は、場所前は稀勢の里の綱取りなど全く話題に上がっておらず、少なくとも終盤戦を迎えるまでは、自分自身でも昇進がかかっているという意識はなかったでしょう。さらにまた、優勝は14日目に白鵬が敗れるという形で決まりました。好成績とはいえ、平幕下位の力士に白鵬が取りこぼすとは誰が予想したでしょう。千秋楽に1差で直接対決し、雌雄を決すると、本人も思っていたはずです。もし、そうなっていたら、結びの一番で稀勢の里は実力を発揮できたでしょうか。苦杯をなめて、優勝も横綱昇進も泡のごとく消え去ってしまったかもしれません。
つまり、優勝も横綱昇進も、稀勢の里が手を伸ばしてつかんだというよりは、向こうから転がり込んできたのです。おかげで、稀勢の里は何らプレッシャーを感じることなく、その両方を手にすることができました。こう書くと「棚からぼた餅」のように見えるかもしれませんが、私はそうだとは思いません。精進を重ね、実力も有り余るほど持っていながら、長い間それを十分に発揮できない憾みがあった稀勢の里に、天の神様も仏様も一斉に微笑みかけたような感じがします。
KCPにもいるんですよね、力がありながら出し切れない学生が。今年も2、3人ほど顔が浮かびます。そういう学生も、稀勢の里のおこぼれにあずかれるといいんですが…。
稀勢の里は頭の上を押さえ込まれていたつかえが取れたので、これからぐんと伸びるような気がします。30歳と年齢的には遅い昇進ですが、大器晩成を地で行くような活躍を期待しています。