電話を取る

4月10日(金)

新学期が始まってからの数日は、午前も午後も授業の終わった直後は、いろんな手続や問い合わせなどの学生が大勢訪れて、事務所の前は大混雑です。事務職員総出でその学生たちをさばきます。私などは事務手続きには詳しくないので、電話番なんかの形で事務職員の後方を支えます。

4:45に午後の授業が終わるや否や、初級の学生の大波が押し寄せました。そのときに電話が鳴りました。

「はい、KCP地球市民日本語学校でございます」「私は今年の3月に卒業したEと申します」。お、私のクラスだったEさんじゃありませんか。「この前インターネットで申し込んだ書類が10日にもらえることになっていましたが、もうできていますか」「はい、10日となっていたら受け取れると思います」「では、これから取りに行ってもよろしいですか」「はい。でも、本当に今すぐですとちょっと混雑しておりまして、少しお待ちいただくことになるかもしれませんが」と、ちょっと他人行儀に。「1時間ぐらいかかりますが、まだやっていますか」「それぐらい後でしたら、もう窓口もすいているかと思います」「わかりました。では、その頃行きます。ありがとうございました」

風邪をひいて声がしゃがれていたせいか、Eさんは最後まで電話の相手が担任だった私だったとは気がつかなかったようです。でも、立派な電話の受け答えでした。どこに出しても決して恥ずかしくありません。こういう話し方ができるように、私たちは訓練してきたんですよ。なんだかうれしくなっちゃいました。

自分からきちんと名乗ったところが、KCPの学生らしくないですね。在校生は何回注意しても電話で名乗りません。「お前は声だけで誰だかわかってもらえるほどの有名人とちゃうやろ、アホ!」と言ってやりたいのをぐっとこらえて「すみません、あなたのクラスとお名前は?」と優しく聞いてしまう自分が、少し悲しいです。

「アー」とか「ウー」言わずに、用件を流れるような日本語で伝えてきたところもすばらしいです。たどたどしさがなく、かといって冷たいビジネスライクでもなく、気持ちよくテンポよく話ができました。

6時少し前に、そのEさんが書類を取りに来ました。H大学の大学院に進学したEさん、大学院は遅刻もできないとこぼしつつも、夢が叶ってやりたい勉強ができる喜びを満面に表していました。

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