寒かったです

4月14日(木)

寒い1日でしたね。日付が変わった直後に最高気温20.2度を記録してから気温は下がる一方で、午前10時以降はは11度台にとどまりました。昨日の日中に比べると、15度近く低いです。日中の気温を最高気温ととらえると、2月20日ごろと同じくらいです。しかし、夜中に記録した最高気温は、平年を1度上回ります。何か月か後で最高気温のデータだけ見ると、2022年4月14日はこの時期らしい暖かさだったということになってしまいます。

数字のデータが実態を表していないことは、よくあります。KCPで毎学期繰り返されるのは、JLPTのN1に合格しているのに、レベルテストで初級に判定された学生がクレームをつけてくることです。JLPTとKCPのレベルテストとでは、実力を測る物差しが違うというか、物差しの当て方が違うというか、日本語学習者をとらえる視点が違います。学習者の日本語力は球のようにどこから見ても同じ形をしていることはなく、どこか歪んでいるものです。その歪みは、とらえ方によって芸術品になったり未完成品になったりします。

N1合格とは、ある特定の角度から見た時には芸術品なのです。それは認めます。しかし、どこから見ても1級品というわけではなく、欠点があらわになる角度があることもまた事実です。KCPで未完成な箇所を手当てして初めて、上級とか超級とか呼ばれる実力者になるのです。日本語を使って学問を究めたり社会に貢献したりできる人物に成長するのです。

EJUにしたってそうです。受験のテクニックを駆使して高得点を挙げても、それを足場にしかるべき大学に進学しても、その学生の将来に資する学問が身に付くかどうかは別問題です。夜中に記録した気温をその日の最高気温だと称しても、その最高気温によってその日を記述することはできません。

天気予報によると、明日も寒々しい雨の日になりそうです。でも、明日は最高気温と最低気温で1日が語れそうです。

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新しい顔も加えて

4月13日(水)

室内にいても汗ばむ陽気でした。教室との行き来で外階段を使うと、スーツの上着が鬱陶しくなりました。最高気温26.4度の夏日ですから、当然ですね。

理科系の受験講座が始まりました。今学期は新しいメンバーが加わりました。先学期までのメンバーでも、Kさんはずっとオンラインでしたから、対面では新メンバーです。対面授業での初めての質問は「今学期はオンラインの学生はいないんですか」でした。Kさん自身も苦労が多かったんでしょうね。今学期初めての学生も、6月19日のEJUには申し込んでいますから、それまでは本番に向けての特別メニューでいきます。基礎部分は省略で、数学は微分積分を中心に進めていきます。

対面だと、問題をさせた時にどのくらい手が動いているか一目瞭然ですから、学生の理解度を見積もりやすいです。前半手が止まっていたPさん、後半はプリントの余白やノートにせかせかと計算式を書いていました。表情にも余裕が出てきて、どうやら理解が進んだようです。Gさんはコンスタントに手を動かしていました。高校卒業間もないですから、私の話が高校の授業にすぐつながったのでしょう。

一方、Yさんは欠席でした。先学期、いくつかの大学を受験しましたが、桜は咲きませんでした。日本語学校在籍期間1年延長の特例を使って4月以降も残ったものの、この調子では見通しは明るくなさそうです。去年のEJUの成績だって、胸を張れたものではありません。6月に気合を入れてすばらしい成績を取れば、早々に合格を決められるんですがね。そういうポジションにいることを自覚していないのでしょうか。

欠席者もいましたが、教室には外とは違った熱気がこもっていました。

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末端の戦い

4月12日(火)

今学期はぱらぱらと新入生や先学期までのオンライン学生が新たに学校へやって来ています。以前のような統一的なオリエンテーションができなかったからでしょうか、毎日事務の受付が混雑しています。ちょっと密かなと思える時間帯もあるほどです。

その中の何名かは、受験講座を受けたいと言っています。本当は昨日から始まっていますが、今すぐ受講を始めるなら傷は浅いです。十分挽回可能です。6月19日が今年第1回のEJUですから、それに間に合わそうという意識が強いのだと思います。

そういう学生が多いことは、学校としては好ましいことです。しかし、今までにどれだけの勉強をしてきたかわからないまま教えるのは、教師としては恐ろしいものがあります。数学や理科の場合、ゼロから始めたら、2か月ではEJUのレベルには届きません。受験したというアリバイは作れても、その成績を生かして各大学の独自試験に挑むというレベルには及びません。

だから、国でどのくらい勉強したか、勉強したことがどのくらい頭に残っているかを学生本人に聞いています。Gさんは去年のEJUを国で受けたと言います。成績を聞くと、数学も理科も平均点をいくらか上回るぐらいは取っています。それなら、直前対策タイプの授業でもついてこられるでしょう。数学は勉強したけれども、すっかり忘れてしまったと言っているJさんには、今学期は総合科目に注力してもらうことにしました。総合科目で箸か棒に引っ掛かりそうな点数が取れたら、11月に向けて数学の勉強を考えてもらうことにします。

2023年度入試は、日本語学校の在籍期間を延長した学生が少なからずいますから、上位校ほど厳しいことが予想されます。その戦いの末端が、KCPの事務の受付で行われているのです。

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信じます

4月11日(月)

受験講座が始まりました。私の初日は、文系の数学です。全員が今学期からの学生ですが、みんな6月のEJUを受けます。ですから、因数分解や展開からやっている時間はありません。学生たちに問題を解かせて弱点をあぶりだし、そこを集中的に講義するという形で間に合わせることにしました。強引なやり方ですが、ある程度の基礎はあると信じてこうすることにしました。

受講生にHさんがいました。Hさんは去年の4月以来オンラインで勉強を続け、ずっと来日できる日を待ち続けていました。私も2学期にわたって教えました。昨年末に入国できそうになったのですが、オミクロン株に対する水際対策でお流れとなり、今も国にいます。6月のEJUを日本で受験するということで申し込みましたが、日本へ来る日程はまだ確定していません。Hさんは淡々と授業を受けていましたが、内心はどうなのでしょう。

日本よりはるかに厳しいロックダウンをしている上海にしたって、感染者は増え続けています。結局、ウィルスの侵入を阻止する手立てなどないのでしょう。だから、感染拡大の初期から言われてきたように、ウィルスと共存するしかないのです。変異株が次々と発生し、それが続々と日本へ入り込むことを前提に、個人の生活も社会も組み立てていかねばなりません。

昨年末に「今年の漢字」を聞いた時、「待」と答えてみんなの涙を誘ったHさん。「待」に希望が伴っているでしょうか。日本政府が入国制限を強める気配は、今のところ感じられません。ほかの学生はともかく、Hさんだけは無事入国できるようにと切に願っています。

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成長を感じる

4月8日(金)

Tさんは1年前にオンラインクラスのレベル1で教えた学生です。まじめな学生でしたが、鋭さに欠ける感じがしました。基礎問題はできても、応用問題は解けないというタイプでした。成績はクラスの真ん中か少し下ぐらいで、レベル2には上がれても、その後順調に進級できるだろうかと密かに心配していました。

そのTさんが、今学期、日本へやって来ました。順調に進級を重ね、今学期はレベル5です。来学期からは上級ですよ。ナチュラルスピードで話しかけても応じてくれますからね。立派に成長したものです。そして、義理堅いことに、この1年間にお世話になった先生方に、国から持ってきたお土産を配ってくれました。私は、健康にいいという干したきのこ(?)をいただきました。かけらにお湯を注いで、しばらく経ってから飲むのだそうです。この稿を書き終えたら、帰宅する前に飲んでみようかな。

同じクラスだったMさんにも生で会えました。思ったより背が高く、自室で受けていたオンラインの時より髪型が整っていて、見違えてしまいました。Mさんは大変な努力家でした。字が汚いと指摘を受けると、丁寧にきれいに書くようにし、会話練習には誰よりも真剣に取り組んでいました。そのおかげなのか、私の軽口にも笑顔でこたえられるだけの日本語を身につけていました。

TさんもMさんも、日本で何を勉強するか目標が明確になっています。だからこそ、監視の目が弱いオンライン授業でも努力を続け、力を伸ばしてこられたのです。日本へ来ただけで安心してしまう人たちではありませんから、これからも期待しつつ厳しく指導していきたいです。

夕方、同じく1年前にレベル1だったJさんが入国し、待機場所のホテルに着いたという連絡が入りました。しばらく、楽しみな日々が続きそうな雰囲気です。

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財布を持って来ませんでした

4月7日(木)

始業日です。始業日といえば教科書販売です。午前も午後も教科書売り場を担当しましたから、教科書を渡す時を利用して、昨日以上にしげしげとオンラインで教えた学生を観察してしまいました。「あなたがTさんか。去年の今頃は日本語が全然わからなかったのに、今学期は中級? 早いねえ」なんていうやり取りを何人かとしました。やっぱり、立体的に見えて生の声が聞けて、タイムラグなしで言葉を交わせるって、盛り上がりますね。

さて、私個人的には、教科書販売は忙しくも楽しかったのですが、若干由々しき事態が発生しました。それは、教室に財布を忘れたという学生が多かったことです。クラスの先生が教科書販売の場所まで学生を連れて来る際に、財布を忘れるなと言っています。昨日までに、教科書代としていくらぐらい必要かも伝えています。教室で教科書の説明もしています。にもかかわらず、中級・上級で数名の学生が財布を持って来なかったと、教室まで取りに戻りました。

今までそういう学生が全くいなかったわけではありません。しかし、こんなに続々と出てきたのは、私の知る限り初めてです。注意力が散漫なのか、聴解力が弱いのか、状況把握ができないのか、いずれにしても教科書を買いに行くのに財布を置いていく学生がこんなにいたとは気懸かりです。先生の言葉が理解できなかったとしたら、これからの授業はどうなるのでしょう。今学期末に控えているEJUやJLPTにも暗い影を落としかねません。中級・上級の学生にいたというと、夏ごろから始まる大学院入試も心配です。

ここまで考えたところで、もしかすると、こういう学生たちは財布からお札を出して物を買うという経験に乏しいのではないかと思い至りました。普段、○○payで支払いを済ませていると、買い物と財布が結び付かないでしょう。お金を知らない子供がいるということも聞いたことがありますが、学生たちもその仲間なのかもしれません。

そういうことも含めて外国から来た留学生を鍛えていくのが、日本語学校の仕事です。

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初対面の再会

4月6日(水)

初対面だけど旧交を温め合う――という不思議な光景が、あちこちで見られました。私も、Lさん、Cさん、Hさん、Mさん、Kさんと、“再会”しました。

密を避けるため午前と午後の2回に分け、このたび来日した学生を集めて、ウェルカムパーティーを開きました。去年の4月以降KCPに入学してオンライン授業を受けてきた学生と、今学期の新入生とをまとめて、いわば2022年4月期来日生を歓迎するイベントです。この中に、去年の4月期にレベル1で教えたCさんたちや、スピーチコンテストのスピーチ指導をしたLさんや受験講座で毎週のように顔を合わせてきたKさんがいたのです。

「わー、生Lさんだ」なんてはしゃいじゃいましたが、実は、「先生、私Lです」と名乗られるまで気が付きませんでした。オンラインの時はマスクなしでしたから、マスクありの顔は初めてだったのです。確かに、よく見ると、目元はLさんです。でも、Cさんは、髪型が変わったせいか、名乗られてもピンときませんでした。zoomの画面の1マスとは、ずいぶん印象が異なります。

レベル1の時に種をまいたCさんたちは、明日からレベル5です。この半年余り受験講座に食いついてきたKさんは今度の6月のEJUに勝負をかけます。みんな、成長すると同時に、日本留学生活の最初の山場を迎えようとしています。その時期に、直接顔を合わせて力になれるとは、教師として意気込みを感じずにはいられません。

歓迎のスピーチをするためにステージに上がった時、午前も午後も、数秒かけて会場を見回してしまいました。誰もが、日本へ来てKCPの校舎で勉強できる喜びに満ちた表情をたたえていました。この顔を曇らせることなく、学生たちを志望校へと送り出したいと思いました。

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進歩は退歩?

4月5日(火)

私が学生たちと同じ年齢のころに流行っていた曲の歌詞には、「ダイヤルを回す」とか「電話が来るのを待っている」とかという文句があふれていました。それによって恋のもどかしさやら相手を想う気持ちやらを表現していました。そういう曲を、映像のないカラオケで歌ったものです。

その後、携帯電話が普及すると、個人と個人がダイレクトにつながるようになりました。ダイヤルは回さなくなり、電話が来なかったらこちらからこちらから押し掛けることもまれではなくなりました。ちょうど、私がKCPにお世話になり始めたことのことです。なかなか携帯電話を持とうとしなかった私は、まわりにずいぶん迷惑をかけました。

更に時代が下ると、携帯電話はケータイになり、電話ではなくなりました。メールをやり取りする道具となり、通話をすることは少なくなりました。学生たちは私たちのはるか前を進んでおり、欠席者に電話をかけても無反応というのが当たり前になってきました。

今では、そのメールも、連絡手段としては風前の灯です。電話をかけても声が聞けないからとメールを送っても、メールをチェックしない学生が多いのです。学校からの連絡はメールでするので、1日に何回か必ずチェックするようにと言っても、反応が鈍いのです。そういう学生は、スマホを使い始めた時からお気に入りのSNSばかりで、メールを使う習慣がありません。自分のメールアドレスも電話番号も知らないんじゃないかな。

ですから、新学期直前のこの時期は非常に気を使います。連絡の抜け落ちがあっては困るのですが、抜け落ちのない連絡方法がなかなか見つかりません。通信使技術は発達しましたが、音声通話だけだったころのほうが、時間はかかっても連絡は確実だったような気さえします。

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今ごろどうしてるかな

4月4日(月)

東京の日本語学校に入学する留学生の多くは、漠然と東京で進学することを考えています。東京大学とか早稲田大学とかの憧れレベルから始まり、そこが無理ならMARCH、そこも難しかったら、それでも都内にというように志望校を選んでいく人が大半と言っていいでしょう。マンガ・アニメ関係なら京都精華大学をはじめ、京都の大学も有力な進学先になりますが、それ以外は、何はともあれ東京です。

Sさんもそんな学生の1人でした。横浜まで出るのが精一杯でした。しかし、自分の本当の実力を知ろうとしたのか、最後の最後に東北大学を受けました。受験直後は受かる可能性はないと言って、すでに権利を確保してあった都内の大学に進学する準備を始めていました。ところが、合格してしまいました。多少悩んで、結局、仙台へ行くことにしました。日本人の目からすれば悩むまでもなく東北大学なのですが、やはり東京に未練があったようです。仙台は小さな町だと言っていました。

でも、仙台で4年間暮らしたら、絶対仙台を離れたくなくなります。学問的にもそうでしょうし、町の魅力に取りつかれることは疑いありません。仙台が小さな町なのではなく、東京が肥大しすぎているのです。世界の潮流に取り残されることなく、ほどほどに田舎で心身ともにくつろげる町と言ったら、仙台や福岡、あるいは札幌か広島あたりではないでしょうか。名古屋はぎりぎりこのグループかな、それともちょっと大きすぎちゃってるかな…。

そのSさん、先週末に仙台へ旅立つ前にあいさつに来てくれました。名残惜しそうに、会う先生ごとに「ありがとうございました」「お世話になりました」と言っていました。

仙台は、これから花の季節です。満開の桜に迎えられての入学式かもしれません。それを見ただけで、東京よりいい所だと思うんじゃないかな。

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18歳になりました

4月1日(金)

新年度が始まるとともに、成人の年齢が18歳に下げられました。すでに選挙権が18歳から与えられていますから、当然と言えば当然です。親とかかわりなく契約が結べるようになるのは問題も大きいなどと議論も盛んになっています。

成人の年齢が下がっても、お酒が飲める年齢は20歳のままで下がりません。勘違いしないようにというキャンペーンが行われていると報じられていました。投票とか契約とかは社会の変化に応じてそれができるようになる年齢が決定されますが、お酒が飲めるかどうかは肉体的な完成度が関わることです。ローンが組める年齢が下がったからといって、その年齢でお酒も飲み始めていいというわけにはいきません。お酒を飲み始める年齢が早いほど、お酒にまつわる病気にもなりやすいと言われています。

KCPには、高校を卒業するかしないかのうちに入学する学生もいます。その歳で、外国でひとり暮らしとは、その辺をうろちょろしている日本人の大学生よりよっぽど大人だと思います。でも、これは平均値であって、学生一人一人をつぶさに見ると、しっかりしているのから、同郷の先輩たちに支えられてもふにゃふにゃしているのまで、十人十色です。

学生たちは自分の国の法律に基づいてお酒やたばこを始めるきらいがあります。ふにゃふにゃに限って背伸びしたがるものですから、大人のつもりでお酒を飲んじゃうんですよね。お前が酒を飲むのは、2年どころか20年早いと言ってやりたくなります。お酒を飲んだり契約を結んだりするということは、それに伴う責任も負うということを意味します。ここがわかっていない若い人が多いのが実情です。

もうすぐ、そういう勘違いをしている人も含めて、大勢の学生たちがKCPにやってきます。

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