素晴らしい学生ですか

9月12日(月)

水曜日の会話の授業で、学生たちの自己PRをさせようと思っています。入試の面接試験で時々聞かれ、聞かれた学生が意外と困るのがこれなのです。自己PRの出来不出来が合否に大きく響くことはないでしょうが、他の試験科目や書類審査で甲乙つけがたいとなれば、これが運命の分かれ目にならないとも限りません。

面接試験は自分を売り込む機会です。“私はこんな素晴らしい学生です”ということを面接官に向かってアピールする場です。面接官に好ましい印象を残す、自分を覚えてもらうということに主眼を置いて、答えていくのです。面接官に忘れ去られてしまったら、合格から遠ざかってしまいます。

面接官にとって聞くに値する素養や経験や性格を有していても、受験生の側にそれを伝える力がなければ、そういうものを持っていないのと同じです。せいぜい15分ほどの入学試験の面接試験で受験生のすべてを知るのは不可能です。だからこそ、訴えるポイントを知っておくべきなのです。

また、 “この受験生が入学したら、自分たちはどんなことをしてあげられるだろうか、何を教えていけばいいだろうか”ということを考えながら面接していると言っていた先生もいらっしゃいました。とすると、自己PRとまではいかなくても、自分の思いを伝えることぐらいできないと、最悪の場合、“この受験生に何をしてあげられるかわからないから、不合格にしよう”などということにもなりかねません。

水曜日の事前課題プリントを作りました。明日、配ってもらうつもりです。

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何が売れるでしょう

9月10日(土)

「輸出産業は円高で経営が苦しくなっているので、為替を円安に誘導する」などということが、昭和末期か平成初期の、“Japan as No.1”のころにはよく言われました。事実、円高不況というのがあり、数字の上では確かにそうなのですが、自国の通貨が強いことのどこがいけないのだろう、わざわざ自国の通貨を弱くする必要があるのだろうかなどと、経済のよくわからない私はそう思っていました。強い円のおかげで、外国に対して意味も根拠もない優越感に浸っていただけかもしれませんが。

政府と産業界の“努力”が実って、半導体も電気製品も自動車も、バンバン輸入するようになりました。それに代わる産業が国内で生まれたかというと、アニメなどのコンテンツとインバウンドの観光業ぐらいでしょうか。しかし、観光業はこの2年余り、目に見えないほどの大きさのウィルスにやられっぱなしで、全く振るいません。世界中のだれひとり予測できなかったこととはいえ、実に脆弱な基盤の上に立っていたものです。

今、日本を代表する産業って何でしょう。サブカルは産業って呼べるのかなあ。日本留学は知識や技術の輸出を考えられないこともありませんが、日本を支える産業とは言い難いです。それに、日本の国が弱ってしまったら、前途洋々たる若者は寄り付きませんよ。“円安をフルに活用して、日本で遊んじゃおう!”なんていう人たちが中心になっちゃうかもしれません。

1ドル150円が目の前です。ロシアのルーブルに対してすら安くなっているそうじゃありませんか。こうなったら、大昔に1ドル250円で作ったトラベラーズチェックが日の目を見る日が来ることを楽しみに待つほかありません。

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偉大な方が

9月9日(金)

エリザベス女王が亡くなりました。在位70年、96歳の大往生です。英国のみならず、世界に君臨していたと言ってもいいくらい、王様らしい王様でした。おそらく、今年最大の世界のニュースとなるでしょう。

40年近くも昔、当時は卒業旅行という言い方はしていませんでしたが、就職直前にヨーロッパへ行きました。この中に女王様がお住まいなんだなあと思いながら、観光客らしくバッキンガム宮殿の衛兵の交代を見ました。私と同年代のダイアナ妃よりも、女王を最初に思い浮かべました。

そのダイアナ妃を始め、女王は多くの王室の方々に先立たれました。また、王室が、日本の皇室とは比べ物にならないくらい強い批判にさらされることもありました。ダイアナ妃の死に対して冷たすぎるなどというのもその一例です。でも、顔色一つ変えず公務をこなしたり世界各国を訪れたりされる姿に、なぜか安心感を覚えました。

そして、女王ご自身が見送られる日が来てしまいました。葬儀は、慣例に従えば18日だそうです。こちらは堂々の国葬です。英国民の4人に3人が女王を支持しているとかですから、英国民誰もが、世界中の人々が、国葬の日に衷心から冥福をお祈りすることでしょう。

こんな国葬の見本みたいなのを見せつけられてしまうと、岸田さん、いよいよもって分が悪いですね。死者を冒瀆するつもりなど毛頭ありませんが、エリザベス女王と比べたら、安倍さんも色が褪せてしまいます。しめやかで厳かであろう女王の国葬の翌週ぐらいに、反対の声の中、ろくに黙祷もしてもらえない国葬だと、安倍さんもかえって成仏できないのではないでしょうか…。

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少なくなりました

9月8日(木)

あちこちから入手した進学データを加工編集しています。もう出願の季節ですから、早く進めなければなりません。細かな分析をしているときりがありませんから、まずは必要最小限の加工をして、データを見やすい形にし、先生方に進路指導の際に使っていただこうと思っています。

そうやって手を付けてみると、留学生の数が減ったんだなあと実感させられます。例えば6月のEJU日本語の受験者数は13,560人で、全盛期の半分ほどです。11月のEJUの応募者数でも22,000人弱ですから、元に戻ったとは言い難いです。入国規制が緩和されましたが、それで解決できるほどの問題ではありません。

K大学の方が入試の説明にいらっしゃいました。EJUの基準点は変わっていませんから、留学生の数が減ったからと言って、大学に入りやすくなりそうだというわけでもありません。そりゃそうでしょうね。日本語が通じない留学生を入れても、他の学生の邪魔にしかなりませんからね。

毎年、受験シーズンが進むにつれて“〇〇大学△△学部は入りやすい”というような怪情報が流れ出します。昨シーズンは入管の特例措置が発表されたためか、怪情報に惑わされた学生はあまりいなかったようですが、今シーズンは特例措置はないでしょうから、どうなるでしょう。こちらもしっかり目を光らせていなければなりません。

お昼過ぎに、卒業生のHさんが来ました。D大学に進み、今はR大学の大学院修士2年生で、博士課程はK大学に進学しようと考えているそうです。Hさんの時代は学生がたくさんいて、授業時間以外は面接練習をしていたような気がします。そういえば、Hさんにもデータを見せながら、あなたの持ち点でD大学なら勝負できそうだとか、滑り止めはE大学でどうだとか、そんな話もしましたね。

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はなむけのことば

9月7日(水)

1時ごろ、午前中にあった私のクラスの授業に欠席したXさんが受付に現れました。私や担任のM先生を呼ぶでもなく、事務職員と話をしています。カウンターまで出ていくと、Xさんは退学届けを書いているところでした。昨日、N大学の大学院に合格し、もう間もなく授業が始まるので、退学して引っ越しするそうです。

担任のM先生から、進学先が決まり、9月中に授業が始まるので、早々に退学するだろうと聞いていました。だからXさんの退学に驚きはしませんでした。でも、机を並べて学んできたクラスメートに挨拶ぐらいはしてほしかったです。昨日も休んでいますから、おとといのコトバデーが最終登校日でした。

明日から、クラスの出席簿にはXさんの名前はありません。だから、出席を取る時に教師がXさんの名前を呼ぶこともありません。自然消滅というか、フェードアウトというか、クラスの学生にとっては「最近、Xさん、見ないね」という感じで消えていくのでしょう。

立つ鳥跡を濁さずと言いますが、Xさんの場合、あまりにも濁さなさすぎます。「N大学に進学します。お世話になりました」ぐらい言ってもよかったんじゃないでしょうか。ミラーさんだってみんなの日本語の25課で言っていますよ。Xさんもそこを通ってきていますから、知らないはずがありません。

こういうあたりの教育が足りなかったのかな。N大学では日本人に囲まれて暮らしていくのですから、こんな一言の有無で人間関係が築けたり崩れたりします。来週にも新しい生活が始まるXさんへのはなむけとして、ちょいと説教してあげるべきだったかもしれません。

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組み合わせる

9月6日(火)

今、受験講座を受講している学生たちは、11月のEJUを目指しています。11月13日の試験日から逆算すると、来学期はひたすら過去問で鍛える必要があります。そうすると、今学期中に試験範囲内の講義は一通り終わらせておきたいところです。9月になると、今まで勉強したことを組み合わせて理解を深めたり練習問題を解いたりすることが増えてきます。

頭の中に物理や化学や生物のネットワークができ上ってきてほしい時期なのですが、今学期の学生たちはそこがまだまだのようです。単一の知識で答えられる問題は順調なのですが、3つ4つの知識の合わせ技で答えるとなると、旗色が悪くなってきます。大学に進学したら、高校理科の科目の枠を超えて頭をひねらねばならないことばかりです。現状でそれについて行けるかなあと心配になります。

私は高校で地学を勉強しました。地学は、物理、化学、生物を総合した科目です。岩石の成り立ち一つを取っても、物理的に見たり化学的に想像したりしながら、そこに化石でも入っていたら生物学的発想も必要です。そういう訓練をしてきたせいか、物理や化学や生物を外側から見る目が育ちました。数学も含めて、これらを道具として使って、自分の解くべき問題を解こうと考えるようになりました。まあ、こういう考え方を持つことはは、エンジニアとして働けば必要に迫られるんですけどね。

今の学生たちにそういうことを伝えたいのですが、なかなか伝えきれません。何より、1週おきに休む学生には、思いは届きません。Pさん、Kさん、あんたたちのことですよ。

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コトバデー

9月5日(月)

7月に予定されていましたが、感染拡大のため延期していたコトバデーを開催しました。スピーチコンテストがクラス代表のスピーカー1名で競っていたのに対し、このコトバデーはクラスの学生全員が出場します。ですから、今学期はどのクラスも密かに練習に励んでいたのです。

残念だったのは、立派な会場を使う予定だったのが、延期したために6階講堂になってしまったことです。ステージも狭ければ音響設備も貧弱で、しかもzoom配信で発表を聞くことになり、当初の計画とはだいぶ違うものになってしまいました。しかし、現在の感染状況に鑑みると、このあたりが精一杯かもしれません。

そんな悪条件にもめげず、学生たちは練習の成果をステージ上で見せ聞かせてくれました。結果として練習期間が延びたおかげで、朗読など、教室で指名されて読解の教科書を読むときより数倍上手でした。まず、つっかえないし、イントネーションもかなり改善されているし、学生によっては感情も込めていたし、この経験を“やればできるんだ”という自信につなげてほしいと思いました。

スピーチコンテスト部門に参加した学生たちは、みんな自ら立候補しただけあって、主張も明確だったし、相当練習したんだなと思わせられる話しっぷりでした。他人とは違った視点で物事を捕らえた発表もあれば、自分の偽らざる気持ち・決意を表明したスピーチもあり、以前のスピーチコンテストに勝るとも劣らぬレベルだったことは確かです。

学生たちには、これを機に話すことに目を向けてもらいたいと思います。話すことはコミュニケーションの基本です。入学試験でも進学後も就職してからも、コミュ力は必要不可欠です。このコトバデーが、そんなことに気付くきっかけになってくれればと思います。

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力を伸ばすには

9月2日(金)

A先生の代講で、中級クラスに入りました。まずは漢字テスト。漢字の読み書きだけではなく、漢字の時間に出てきた語彙を使って例文を作る問題もあります。学生の力を見るには好適な問題です。

授業後、採点してみると、漢字の読みができていませんでした。濁音か清音か、長音になるかならないか、促音の有無など、引っ掛かりやすいところでみんなつまずいているようでした。日本語の音が完全に入っていないのかもしれません。このクラスの学生は日本語力が今一つだと聞いていましたが、こんなところにその一因があるような気もしました。

例文は、上述のようなミスには目をつぶると、語彙の意味が全然わかっていないようなものはありませんでした。しかし、初級で勉強してきたはずの小技が使えないんですねえ。「お酒を飲んで泥酔しました」じゃ、〇はあげられません。せめて、「お酒を飲みすぎて泥酔してしまいました」としてもらいたいところです。まあ、これはこのクラスの学生に限ったことではなく、中級の学習者全般に当てはまりますが。

音がきちんとつかめていないと、正確な発音ができません。すると自分の発話力に自信が持てなくなり、黙ってしまいます。相手の発話も聞き取れないとなると、コミュニケーション力などゼロですよ。小技なしの文を並べ立てられたら、日本語教師以外の日本人は違和感にさいなまれて頭痛がしてくるでしょう。自分の心のひだを伝えられなかったとしたら、これまたコミュニケーション力に“?”を付けざるを得ません。

どちらも、学生独りでは力を伸ばしきれないでしょう。教師が、腕を引くのかお尻を押すのかわかりませんが、学生のお手伝いをすることが必要です。

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大改造

9月1日(木)

朝、Kさんが志望理由書を持って来ました。明日の消印有効のE大学に出願する書類ですから、大急ぎで読んで添削しました。

Kさんの志望理由書は、この前読んだHさんのみたいに文字は日本語だけど文は日本語ではない、という代物ではありませんでした。E大学を選んだわけや将来の計画など、要点はわかります。志望理由書としての必要最低限の内容は備えています。しかし、そこまででした。訴える力がありません。読み手の興味を引くものがありません。だから、印象にも残りません。「これじゃ、厳しいだろうな」というのが、偽らざる感想でした。

まず、全体的に文が長すぎます。1つの文だけで構成されている段落がいくつかありました。こういう文は、概して主述や修飾被修飾の関係が不明確で、一読では意味をつかみかねます。だから、パンチが弱くなります。

それから、E大学進学の目的が、書いてはありますが、目立ちません。やはり、これは、ドカンと先頭に持って来ましょう。“結論は先に”です。

そして、E大学について調べた成果も、せっかくですから明示しましょう。Kさんも、そこはかとなくにおわせていますが、それでは弱いです。ここはしっかり自己アピールしなきゃ。

という調子で、Kさんの志望理由書の土台は残したまま、大改造を施しました。「私の言いたいことがはっきりしました。これから何校か出願するつもりですが、志望理由書が上手に書けるようになるでしょうか」と、Kさんが不安げに尋ねてきました。「ま、どの学生も初めての志望理由書はこんなもんですよ。だんだんすらすら書けるようになりますよ」と答えたら、多少は不安が消えたみたいです。

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水増し同然

8月31日(水)

岸田首相が、留学生30万人計画を拡大する方向で見直す方針を打ち出しました。“鎖国”直前は31万人ほどにまでなりましたが、現在は24万人程度に減っています。これをもう一度30万人に戻し、さらに上積みしようという考えです。

日本語学校は、日本の高等教育機関で学ぼうという意志のある方々をお預かりし、日本語力を付けさせ、大学院や大学、専門学校などに送り出すという役割を担っています。だから、国が留学生を増やすために汗をかいてくれるのは、本来ありがたいことです。しかし、留学生の実態を知っていると、このまま人数ばかり増やしていいものかと思う気持ちも抑えられません。

Cさんは数学がよくできます。でも、Cさんの宿題を見ると、問題に対して答えしか書いてありません。答えの導出過程は全く書かれていません。数学の答案を書くことは、論理思考の訓練です。それができないとなると、進学してから伸びないのではないかと思います。そういう学生が、Cさんだけではないのです。

この稿でたびたび書いていますが、EJUの問題は、高等教育機関の入試としては、非力です。“対策”でどうにかなってしまう部分が大きすぎます。こういう試験で高得点を取った受験生がそのまま大学に進学すると思うと、大学の教育の質に影響が及ぶのではないかと心配です。

ガリガリ1人で勉強して、マークシートの選択式問題は得意だけれども、筆答式となるとたじたじで、口頭コミュニケーション力ン不安のある留学生が増えるのではないかと危惧しています。大学院入試にも“対策”があったり、専攻そっちのけで志望校を選んだりしているのを見ていると、大学院や大学において留学生を増やすことが、本当に日本の国力を向上させるのか、若者の教育という形での国際貢献につながるのか、疑問を思います。

二流か三流の学生で30万人とか50万人とか、数字を振り回しても意味がありません。岸田さん、そういうところまで見た上で考えをまとめていますか。

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