寒い

2月18日(土)

春一番の翌日は冬型になるのが常ですが、昨日は最高気温が20度を超えたのに、今日はやっと10度に手が届いた程度です。風向きも、昨日は南風だったのに、今日は北西の冬の季節風そのもの。明日の朝は真冬並みに冷え込むという予報が出ています。

超級クラスの中間テストの採点をしました。同じ教材で同じように授業をしてきましたが、テストをしてみるとかなりの差がつきました。不合格者こそいませんでしたが、かろうじて合格が何名か。

Hさんはどうやら漢字の勉強をしてこなかったようです。だれでもできるラッキー問題すらも落としている体たらくです。漢字のない国からきているVさんやTさんにも大差を付けられました。でも、他のパートで挽回し、合格点を1点上回りました。

Wさんはカタカナ語がからっきしだめでした。問題文は、Wさんにとっては意味不明の文が並んでいるに過ぎなかったのかもしれません。

漢字の問題は、中国の学生に有利になり過ぎないように、中国語の漢字とは微妙に違う字を必ず入れています。それにものの見事に引っかかってしまったのが、Sさんでした。本人は満点のつもりかもしれませんが、成績を見たらがっかりするでしょうね。

私のクラスは大半が卒業生です。それゆえ、昨日のテストは「卒業証書」がかかったテストでした。まだすべての採点が終わったわけではありませんが、まじめに授業を受けた学生たちは、合格点が取れたのではないかという手応えがあります。さあ、実際のところはどうなのでしょう。来週のお楽しみです。

C予報

2月17日(金)

バス旅行が来週の木曜日に迫ってきましたが、週間予報によると、どうもお天気が思わしくないようです。気象庁の予報によると、栃木県は曇り時々雨ですが、日光江戸村は山沿いですので、もう少し悪いかもしれません。他のサイトの気圧配置予想によると、木曜日は低気圧が本州に中央部のさばっていて、悪天候オーラを発散しまくっています。

数年前のバス旅行で日光江戸村へ行ったときは、いろいろなデータから曇りという予報を出しました。確かに、東京は曇りで、東北道も厚い雲の下でした。このまま逃げ切れるかなと思ったのですが、もう少しで江戸村というところから雨が降り出しました。江戸村の背後の山に雲が登っていくのがはっきり見えました。山沿いは雨が多いという気象の基本をいやというほど感じさせられました。

だから、今回の予想気圧配置の低気圧は、とても不吉な予感が伴うのです。1週間先ですから、これから変わる可能性も結構高いという点だけを頼りにしているのです。気象庁も、あまりあてにならないという意味の「C」ランクをつけているのだけが救いです。

雨が降ると、江戸村内のそぞろ歩きができなくなりますから、とても辛いのです。室内のアトラクションも楽しいのですが、学生たちに江戸時代の暮らしの一端を感じ取ってもらうとなると、ぶらぶら歩き回るのが一番なのです。だから、せめて曇りで踏みとどまってもらいたいのですが、一体どうなるのでしょう。

中間テストが終わりました。来週がバス旅行で、再来週は卒業式です。1月期は、毎年、駆け足で過ぎ去っていきます。

日本語力を伸ばそう

2月16日(木)

Kさんは今学期から受験講座の理科を始めた学生です。まだ初級ですから、こちらも話し方に気を使います。Kさんのレベルのクラスに入ったつもりで、理科の授業をしています。そうはいっても、トリプシンとか競争的阻害とか、専門用語はどうしようもありません。そんな言葉を使って現象や概念などを説明するときには、言葉につられて難しい言い回しにならないように気をつけています。

国で勉強してきたこととも合わせて、Kさんは私の話を理解しているようです。確認の質問をすると、理解できているリアクションを示します。しかし、考えを口で説明しろと言うと、とたんに困った顔になってしまいます。もう少し上のレベルにならないと難しいようですが、口頭試問のある大学が増えていますから、一刻も早くそのレベルになってもらいたいです。

さらに、EJUの過去問をやらせると、問題文の読み取りができないがために、問題が解けなかったり、解けてもとても時間がかかったりしているというのが現状です。私がかみ砕いて説明すると、ああわかったという表情になります。こちらはあと4か月でどうにかしないと、EJUで点が取れませんから、来年4月に進学に差し支えます。

Kさんのいいところは、次の授業で何をするかを聞いて、国で勉強した教科書などで予習してくるところです。だから、教科書の図を見るだけで理解が進むこともありますし、専門用語も国の言葉との対応がつけば頭に入ります。日本語の力が伸びれば、理科の成績も上がっていくのではないかと期待しています。

引く

2月15日(水)

超級クラスでは全員にプレゼンテーションをやってもらうことにしています。今までに何人ものプレゼンを見てきましたが、その中で一番はKさんです。

多くの学生が自分の興味の対象を紹介し、下手をすると自分の世界に入ってしまうこともあるのですが、Kさんは自分がどうしてD大学進学を決めたかということを、子供の頃にまでさかのぼって語ってくれました。確かにスーパー個人的な内容の発表なのですが、聞き手の興味をそらさない話し方をしていたことが印象に残りました。

思い入れのないことについてプレゼンしても、心のこもっていない、聞き手に訴えるものの薄いプレゼンになるでしょう。でも、思い入れがありすぎると、もう少し正確に言うと思い入れがあふれすぎていると、話し手は思い入れの海に浮かび続ける快感に浸ってしまい、聞き手のことを忘れてしまいがちです。そうなると、聞き手は置いてけぼりを食い、引いてしまうものです。

残念ながら、現時点での学生のプレゼンはこういうタイプが目立ちます。志向や思考や嗜好が同じ方面を指向しているなら聞いていて楽しいかもしれませんが、そうでないと壁を感じてしまうこともあります。熱意は伝えられても、それ以外のものを聞き手に与えることは難しいでしょう。

話し上手な人は、こういう点の機微がわかっていて、相手の反応を見ながら話のコントロールができます。同時に、話しながら聞き手の興味を引く術を思いつき、それを実行する器用さもあります。今の学生たちにここまで求めるのは酷でしょうが、進学して、就職してと、人生の階段を上っていくにつれて、こういった技能は必須のものとなっていきます。人の上に立とうと思ったら、なおさらのことです。

Kさんのプレゼンが学生たちの刺激になり、聞き手の心を捕らえるプレゼンが続くことを祈っています。

練習台

2月14日(火)

Gさんは、この時期に至って立て続けに大学院の入試を控えています。社会科学系の専攻ですから私の専門外なのですが、なぜか私に面接練習を頼んできます。先日、私が面接練習をした大学院入試に通ったこともあるかもしれません。

でも、最大の理由は、私のような素人を相手に面接練習をすると、Gさん自身の考えがまとまってくるからのようです。私が素人くさい質問をし、それに対して素人でもわかるように筋道を立てて説明しているうちに、自分の考えの強みも弱みも見えてくるのだそうです。弱みを補うべく説明を追加したり議論の進め方を工夫したりすることが、Gさんにとっても頭の中を明確にすることにつながっていると言っていました。

大学院入試ともなれば、専門的なツッコミにどれだけ耐えられるかが勝負の分かれ目だと思っていましたが、それ以前にきちんと自分の脳内を面接官に示すことが重要なようです。それには、なまじ専門知識があるより何もない人にわからせるほうが練習になるのです。

昔、NHKの週間こどもニュースで、お父さん役の池上さんは、出演するこどもたちに放送原稿を読み聞かせ、こどもが1人でもわからないと言ったら原稿を書き直したそうです。そのこども役を、今の私はGさんから仰せつかっているようです。どうせわからないんだからと開き直ってあれこれ質問するのが、Gさんにはいい練習になるようです。

その一方で気になるのは、今週末の本命校の受験に備えて家に引きこもっているBさんです。欠席だから即悪いことをしているとは思いませんが、そんなことをしていたら四方八方どん詰まりになってしまうんじゃないかと心配です。結果が出せればいいのですが、どうなることでしょうか。

子供と話す

2月13日(月)

超級クラスは、近くのH小学校との合同授業をしました。昨年度から行われている地域交流であり、今年度は私のクラスがKCPの代表に選ばれました。

学生たちは日本の小学校に入るのは初めてであり、おっかなびっくりであり興味津々という顔つきで校舎に入っていきました。私も選挙の投票以外で小学校に入るなんていうことはなく、動き回る子供たちに思わず見入ってしまいました。

交流授業は図書室で行われました。今日は初回ということで、自己紹介が中心でした。学生と小学生たちが自己紹介し合っている間、私は図書室の本を見ていました。ハリーポッターのような比較的新しい本も並んでいましたが、「ルパン」とか「家なき子」とか「シートン動物記」とか、概して私が小学生の頃にもあった本のほうが多かったような感じがしました。そういう本は不朽の名作ということなのでしょう。

それから、子供たちの名札がローマ字だったことも、私にとっては驚きでした。今日のクラスは高学年でしたから、英語教育を見据えてのことかもしれません。私のころは、もちろんひらがなか漢字で名前が書かれていました。そして、それをどこでも必ずつけて歩くように言われました。しかし、今日の子供たちの名札はかなり大判で、明らかに校内用でした。今は物騒な世の中ですから、名札をつけて外を歩くなど、考えられないのでしょう。

そんな観察をしているうちに、交流授業は終わりました。学校に戻ってから学生たちに聞いてみると、1か月分の日本語をしゃべったなどという声もあり、かなりの刺激になったようでした。日本語的には手加減したわけでもされたわけでもなく、いい勝負だったみたいです。

この交流授業は今週から来週にかけてする予定です。学生たちが小学生を通して新宿という街をより深く知ってくれたら、日本のごく普通の子供やその家族、日々の生活に触れて日本をより深く知ってくれたら、この授業は大成功です。

悩み

2月10日(金)

朝、メールを開くと、Kさんから進学相談のメールが来ていました。Y大学に受かったけれども、来年もっと上のランクの大学を狙いたいというものです。

Y大学はネームバリューもありますし、それ相応の評価も受けています。しかし、それ止まりです。いまひとつ一流になりきれないところが、Kさんの気になるところなのかもしれません。

Kさんのメールを読んで、Kさんはこんなにも自分に自信を持っていないのかと驚かされました。KCP入学以来、まじめに勉強していましたが、それはこの自信のなさの裏返しだったかもしれないと思いました。こちらからどんどん口を挟んで、どんどん受けさせればよかったと反省しています。

Kさんは実力のない学生ではありません。教科書を音読させたら、たぶんクラスで一番上手でしょう。漢字もよく知っているし、文章力もあります。しかし、Kさんは自分のそういった力に気付いていないのです。だから、Kさんと同じくらいの力の学生が、Kさんの考えている大学を受験して受かっても、ああいいなあと見送るだけでした。ところが、受験体験ぐらいのつもりで受けたY大学に受かったことで、急に欲が出てきたのです。自分ももしかしたら周りの友だちが合格を決めたような大学に受かるのではないかと思い始め、私にメールを送ってきたのでしょう。

要するに、「1年」をどう考えるかです。受験勉強に使って狙い通りの大学に入るか、Y大学に進学して早く社会に出るかという選択です。Kさんのようにきちんと勉強していける人なら、その勉強の場がY大学であろうとKさんの思い描く大学であろうと、着実に成長できると思います。ただ、Kさんがどの程度真剣に大学選びをしたかは気になります。Y大学で自分の勉強したいことが勉強できるならいいのですが、大学も学部も学科も適当に選んでいたとしたら、本気で進路を考え直したほうがいいと思います。

そんなメールを返信しました。夕方、Kさんは友人たちと受付で談笑していました。どんな結論を出したか、はたまた考え中なのかわかりませんが、来週クラスに入ったとき、話を聞くことにしましょう。

次が来る

2月9日(木)

K大学に合格したCさんが、入学手続でわからないことがあると言って、私のところへ来ました。K大学から送られてきた資料を読みましたが、私にもわかりませんでした。「これはK大学に電話して、直接聞くしかないね」と言うと、Cさんはかけてくれといわんばかりの視線を私に投げかけました。

かけてあげてもよかったのですが、いつまでも私たち日本語教師がCさんのそばにいられるわけではありませんから、自分でかけるようにと促しました。「緊張しますからどう聞いたらいいかわかりません」と言いますから、尋ね方を教えて、Cさんにかけさせました。問い合わせて得られた結論はCさんにとって必ずしも喜ばしいものではありませんでしたが、Cさんは1つの大仕事を成し遂げたような表情をしていました。

PさんはE大学を目指しています。E大学の独自試験の準備をしています。数学の問題を解いたところ、答えは合っていたものの、解き方は模範解答と全然違っていました。それで、自分の解き方でも点数がもらえるかと私に聞いてきました。

Pさんの解き方は、間違ってはいませんが、大学に入ったら通用しない考え方に基づいていました。練習問題レベルならそれでも答えが出せますが、もっとひねった問題となると苦しくなるでしょう。そういうことをアドバイスしたら、ちょっと苦笑いしながら納得してくれました。

来週の月曜日から、6月のEJUの出願が始まります。もう少しで今シーズンが終わると思ったら、もう来シーズンが始まろうとしています。なんと慌しいことでしょう。

見失っちゃった

2月8日(水)

ZさんはG大学に合格しました。しかし、本命はこれから受験を控えるB大学です。1つ行き先を確保したので、精神的にゆとりを持って試験に臨むことができるでしょう。ところがZさんは、過去にB大学に合格した人たちのEJUの点数を見たら自分よりだいぶいい成績だったので、G大学に受かった喜びも半減という顔になってしまいました。

XさんはD大学に出願していましたが、書類審査ではねられてしまいました。小論文や面接の準備をしていただけに、門前払いのショックは大きかったようです。そのショックを振り払うかのように、来週に迫ったH大学の面接練習に打ち込みました。しかし、どうしても考え方がネガティブなほうに向かってしまい、話がくどくなりがちでした。自分の思いを漏れなく伝え、少しでも面接官に好印象を残そうとするあまり、かえって主張が見えなくなってしまうのです。誤解を避けようと説明を加えすぎ、本筋が隠れてしまいました。私はXさんの他大学に出した志望理由書も読んでいますし、面接練習も何回もしていますから、Xさんの意図するところはどうにか理解できますが、始めて顔を合わせるH大学の面接官はどうでしょう。

2人とも、これから挑む大学は、背伸びして思い切り手を伸ばしてかろうじて指先が最下辺に触れるかなというレベルの難関校です。これを記念受験にしないためには、守りに入ってはいけません。一か八かの勝負に出ることさえ考えてみるべきかもしれません。それを、過去のデータを見てびびったり、やたら予防線を張りまくって言いたいことがまっすぐ言えなくなってしまっていたら、勝ち目なんかありません。

これからしばらくは、こういう悩める子羊のお世話が続きます。

アセトアルデヒド、ジエチルエーテル…

2月7日(火)

受験講座化学は、今日から有機化学です。学生たちが最も苦手とする分野です。苦手の原因は、カタカナで表される物質名です。有機化学の理論そのものは国で勉強していますが、物質名は根本的に違います。中国の学生は漢字で覚えてきたし、韓国の学生はハングル表記しか知りません。しかも、有機化学は登場する物質がやたらと多いです。“cyclo”を“シクロ”と読むなど、日本流の英単語の読み方も相まって、エチレン、トルエン…などに学生たちはみんな泣かされます。

EJUの有機化学の問題では英語名が併記されますから、カタカナ語を捨てて英語名で覚えてしまうのも手です。でも、学生たちはそこまでの度胸は持ち合わせていないようで、ぶつくさ言いながらもベンゼン、アセトン…などと一つ一つ覚えていきます。6月のEJUまでに覚えればいいのですが、物質名だけでなく、その性質や周辺の物質との関連なども頭に入れていかなければなりませんから、案外時間がないものです。

現在合格を重ねているWさんやYさん、Zさんなども、1年前は同じように苦しんでいました。それでも何とか食らい付いてきましたから、そのときから温めてきた本命校に挑戦するまでに実力を伸ばしてきました。この時点で粘りきれなかったSさんやLさんは、1年前には思いもよらなかった大学への挑戦を強いられています。

日本での進学は思ったよりも難しかったと感想を述べる学生が、毎年何名かいます。国での競争から逃げてきて楽をしようったって、そうは問屋が卸しません。自分の可能性を切り開くなら、それ相応の苦難が伴うものです。今日の学生たちも、そういう意味で大いに苦しんでもらいたいです。