堕落

6月20日(木)

もうすぐ区議選だっけ? 2週間ほど前でしょうか、学校の近くの公園に設置された大きなポスター掲示板を見かけたとき、そう思いました。区議選なら何十名も当選しますから、幅数メートルの掲示板でも不思議ありませんが、このバカでかい掲示板が都知事選のものだと知った時、えーーーっと思ってしまいました。確かに都知事選は昔から立候補者が多かったですが、48名分の掲示板は大きすぎるんじゃないでしょうか。ニュース映像などに出てくる県知事選のポスター掲示板は、普通は4人分ですよ。

東京都知事選が告示されました。56人が立候補しました。掲示板は足りませんでした。NHKから国民を守る党は、24名もの候補を立てました。区議選ならともかく、当選者が1名の知事選に1つの党から複数名立候補すること自体がおかしな話ですが、これは百歩譲って大目に見ることにしましょう。これに加え、この党は、立候補者が得たポスター掲示板にポスターを張る権利を、他者に売って利益を得るそうです。候補者乱立を防止するために設定された供託金を没収されても、十二分な収益が上がると報じられています。こういうことは公職選挙法の想定外で規制はなく、法律違反にはならないそうです。

昨日は政治資金規正法の改正案が可決成立しました。政治にはお金がかかるものです。だから、私は政治家がお金を集めることを全面的に禁止せよとは言いません。しかし、この改正法は、昨今問題になっているお金の汚い集め方について何ら規制していません。ですから、自民党のみなさんは、法律に書かれていないという理由に基づき、今まで通りの汚い集め方を続けるのでしょう。これは、NHKから国民を守る党の、ポスター掲示板ぼろもうけの発想と通底しています。

政権与党がこのざまです。いつから、日本人は、法律に書かれていなければ何でもしていいなんて思うように堕落してしまったのでしょう。これが、日本の停滞をもたらしている最大の原因のような気がしてなりません。

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朝日を浴びて

6月19日(水)

昨日は98ミリの雨が降りましたが、帰宅時にはほとんど上がっていました。天気予報も晴れだと言っていたので、チャンスだなと思いました。

今朝4時、空の大部分はまだ暗かったですが、北東の空にはきれいな朝焼けが見えました。あさってが夏至ですから、この時期の朝日は東からではなく、北東に近い方角から昇ります。ネットで調べると、真北から60度東、真東から30度北からですから、昔流の言い方をすれば、寅の方角です。雨の日の翌朝ですから水蒸気が多く、筑波の峰はそのかなたでしたが、気にせず出発しました。

朝の早いこの時期、家から直線距離で3キロちょっと離れた上野駅まで歩くと、途中で夜が明けます。特に今朝のような雨上がりは、空気が澄んでいて、かつ速足で歩いてほどほどに体が温まる程度の気温なので、本当に気分爽快です。

少し遠回りをして、上野公園を抜けました。昨日の雨をたっぷり吸い込んだアジサイが、朝の光を受けて、生き生きとみずみずしく赤、白、青、色とりどりに咲いていました。上野公園と言えば春の花見ですが、この季節もなかなか捨てたものではないと思いました。

さて、学校は期末テスト。期末テストの日は、アメリカの大学のプログラムで来ている学生の修了式があります。今学期はいつもの学期と違って、琴クラブの発表会がありました。もうすぐ帰国する学生が、見事な演奏を披露してくれました。

朝のすがすがしい空気の中を歩いて始まった一日が、美しい琴の音色で終わりました。

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はじめまして

6月18日(火)

朝一番の仕事は、新入生へのインタビューでした。先週実施した7月期の新入生のプレースメントテストの結果中級以上と判定された学生に、改めてインタビューして、レベルを決定しようというわけです。

Yさんは今アメリカにいます。時差の関係で、日本の早朝が向こうでは昨日の昼下がりです。プレースメントテストは夜に頑張ってもらいましたから、インタビューはYさんの頭が一番活発に動いている時間帯に設定しました。

オンラインがつながると「こんにちは」とYさん。「日本はおはようございますの時間です」「あ、そうですね」「今、東京は雨が降っていますが、そちらはどうですか」「いい天気ですよ」といった調子で緊張をほぐしながらインタビューを進めました。

Yさんはずっと国で勉強していましたからでしょうか、日本語を話し慣れていない感じがしました。現に、KCPでは会話の勉強がしたいと言っていました。

午後もインタビューでした。RさんはJLPTを5回受けました。だいぶ前にN1に合格したのですが、去年はN2を受けました。N2はN1に比べて実用的な日本語が出てくるので、その勉強をしたうえで受験したそうです。結果は満点。数年前の在校生Nさんが、同じようにN1に受かった後でN2を受けて満点を取りました。Nさんは話す、聞く、書く、読む、すべてに秀でていて、どんな日本語にも対応できました。そんな学生が入ってくるのでしょうか。

最後はLさん。雑談の時に日本でどこへ行ってみたいかと聞いたら、熱海という答えが返ってきました。関西とか北海道とか富士山とか広島とかというのは聞いたことがありますが、熱海は初めてでした。レベル判定そっちのけで、興味本位で「どうして?」と聞いてしまいました。熱海の花火大会の映像を見てきれいだと思ったので、ぜひ実際に見てみたいのだそうです。今年はKCPの夏休み期間中の8月18日にあるようですから、ぜひ見に行ってほしいです。

入学式までまだ間がありますが、Yさん、Rさん、Lさんに会うのが楽しみです。

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地下活動

6月17日(月)

午前中の養成講座の授業が終わって一息ついていたら、「ちょっと地下室まで来ていただけませんか」とN先生に引っ張られました。「あ、練習ですね」と言いつつ下りていきました。

地下室では、演劇部が練習に励んでいました。次の公演は、来学期のコトバデーです。私もチョイ役を頼まれていましたから、どんな感じか見に行ったという次第です。

練習が始まって日が浅いのでしょうか、出演する学生たちは台本を見ながら立ち位置と動きを確認しつつセリフを言っていました。私も台本を渡され、登場場面でセリフを言いました。学生たちは「先生、上手ですね」という顔をしていましたが、こちとら60年以上も日本人をやっていますから、1行足らずのセリフを感情込めて言うくらい、朝飯前です。

以前も演劇部のステージに立ったことがありますが、今回はそれよりもセリフが多いです。最近記憶力が衰えてきましたから、セリフが全部覚えられるかどうか心配です。学生相手出なければアドリブでどうにかするという手も使えますが、突然台本にないセリフを聞かされたら、学生は混乱に陥るでしょう。ですから、せめて台本に近い内容のことを言わなければなりません。

台本がスラスラ読めたのは上級のSさんぐらいで、初級や中級の学生はつっかえつっかえで棒読みにもなっていませんでした。でも、つっかえたところを教え合ったり、身振り手振りを加えたり、動きながらストーリを確認したり、本番を成功させようという意欲はひしひしと伝わってきました。

本格的な練習は新学期が始まってからでしょう。間違っても足を引っ張ることなどないように、私も努力し寝ければ。

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教師も勉強

6月15日(土)

学生たちは、自分たちは、KCPのテストから入学試験やJLPT、TOEFLまで、日々いろいろな試験があり、毎日勉強しなければならないのに対し、先生たちは自分たちをいじめるテストを作るばかりで、授業も毎学期同じことを繰り返せばよく、あまり勉強しなくてもいいと思っている節があります。

いいえ、決してそんなことはありません。土曜日なのに、いや、土曜日だからこそ、勉強会がありました。ほぼ全員の教師が集まり、日本語教育を専門としている大学の先生のお話を聞き、その後そのお話に基づきグループに分かれてディスカッションをしました。議論が盛り上がり、有意義な勉強会でした。

現在、KCPはカリキュラムを改訂しようと考えています。少しずつ新しいカリキュラムに移行しつつある段階です。その新しいカリキュラムにのっとった教育を円滑に実施していくには、勉強しなければならないことが山ほどあります。勉強会にはこういう背景があるのです。

平日は、授業やら学生指導やらに追われて、勉強する時間がなかなか取れません。それに加えて、私は代講が利かない授業をいくつも抱えていますから、外部の講習会に参加することもままなりません。ですから、大学の先生のお話は刺激的であり、頭の隅々にまで血が巡ったような感じがしました。

教師も勉強をしていますが、やっぱり学生の勉強量にはかないませんね。日中、2階のラウンジで、Cさんなど数名が、明日のEJUに備えて問題集に取り組んでいました。もはや、私たち教師には、学生たちが実力を遺憾なく発揮できるようにと、祈るよりほかにできることはありません。

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シャープペンシル禁止

6月14日(金)

EJU本番前最後の授業日ですから、EJU受験の際の注意事項を学生たちに伝えました。受験票と一緒に注意事項も送られているはずですが、ろくに読みもせずにほったらかしにしているおそれが多分にありますから、各クラスで注意喚起をしてもらいました。

EJUを実施しているJASSOが公表している注意を読むと、試験会場外と連絡を取っての不正行為に非常に神経をとがらせていることがわかります。シャープペンシルも使ってはいけないというのは、小型の発信機と区別がつかないからでしょう。うっかりシャープペンシルを使って失格にでもされたら、今シーズンを棒に振ってしまうことにもなりかねません。一罰百戒の“一罰”として血祭りにあげられたらたまりません。

昔は、試験での不正行為と言えば、他人の答案用紙をのぞき込んだり、カンニングペーパーを見たりといった古典的手口でした。しかし、昨今は外部の人に答えを教えてもらうなど、大掛かりになりました。通信技術の発展の負の一面と言っていいでしょう。

そんな無理をしてまで進学しても、卒業できなければ意味がないでしょ。留学生の場合、日本語力で背伸びしても、進学先で苦しくなるだけです。分相応の所に進学するのが、その学生にとって一番幸せな結果をもたらします。“いい大学”に入りたかったら、日本語学校でもう1年日本語を鍛えてから挑戦すべきです。

泣いても笑ってもあと2日です。ここまで来たら、勉強するより体調を整えて、ベストコンディションで16日の試験に臨んでもらいたいです。

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初面接練習

6月13日(木)

初級の学生対象の進学準備授業が最終回だったので、思い切って模擬面接をしてみました。先週自己紹介文を考えさせていますから、それを入試の面接の場という想定で発表してもらおうと考えました。学生にとっては初めてのことですから、いきなりうまくいくとは思っていませんでした。

Kさんは左手で右手の手首をつかみ、放そうとしません。Jさんはしゃべり出すたびに右手をひらひらさせます。緊張していることが丸見えでした。模擬面接が終わった後で見ていた学生に「どうでしたか」と聞くと、「Kさんは緊張でした」という感想が即座に返ってきました。でも、そういう感想を漏らした当の本人が、同じように異常な行動を示しました。みんな緊張するものなんだと悟ってくれれば、次回以降、多少はリラックスして話せるのではないかと期待しています。

それから、初級ですから語彙がないのでやむを得ないのですが、自己紹介の内容が浅いですね。自分をアピールする、面接官の印象に残る言葉がありませんでした。「趣味は○○です」で終わりにするのではなく、一言何か付け加えてほしいところです。今回は私から質問を繰り返すことでその“一言”を引き出しましたが、これは次学期の課題です。上級にも「趣味は○○です」でお茶を濁してしまう省エネ学生がいますが、そんなふうに成長しないように鍛えていかねばなりません。

来学期は本番の面接を迎えるかもしれません。その面接練習の時に、この面接練習を思い出してもらえれば、何にもなしの学生よりは上手にできるでしょう。

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朝の採点

6月12日(水)

今朝、出勤して最初に取り組んだ仕事は、昨日の日本語プラスの時間に学生に書かせたEJU記述の採点でした。昨日のうちにざっと目を通してだいたい何点ぐらいか見当をつけておきましたから、2度目はじっくり読んで添削しながら最終的に採点しました。今度の日曜日がEJUの本番ですから、急いで採点して午前の授業の時に、学生に返してもらおうと思ったわけです。

EJUの記述は、独創性はあまり要求されません。何と言っても論理構成が採点のポイントです。文法の間違いや誤字脱字もないに越したことはありませんが、それよりも話の筋が通っているかどうかです。問題文の指示に従って、自分の意見まで書けたら、毎回35点前後の平均点ぐらいはどうにかなるでしょう。

さて、採点してみると、初級のLさんは最後の段落が書ききれませんでしたが、言いたいことは十分にわかりました。自分の考えが書きかけでしたから、ちょっと厳しいかもしれませんが、35点。Sさんは制限時間の数分前には書き終わっていたようでした。文章全体の骨組みはできているのですが、1つ1つの文がひどすぎます。KCPの学生たちの例文や作文によって日々鍛えられている私が、添削という和文和訳をしながら読んでもピンとこなかったのですから、EJUの採点官にわかってもらえる可能性は低いでしょう。25点じゃ甘いかな。Tさんはさすが上級で、内容はよくわかりました。話の進め方が若干強引なので、45点。Cさんもまとまっていましたが、Tさんのよりいくらかわかりにくかったので、40点。

こんな調子で全員分採点し、午前の先生方にお渡しできました。多少なりとも学生たちの成績を伸ばすことに貢献できたら、うれしい限りです。

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時間との闘い

6月11日(火)

先週から、日本語プラスの理科は、EJUと同じ試験時間、80分で過去問2科目を解き、マークシートまできっちり塗る練習をしています。EJUの理科の問題は、時間さえあれば必ず解けます。1題1題は決して難しくないのですが、受験生は問題数で圧倒されてしまうのです。科目間の時間配分と、それを守るためのスピード感を実地に体験して、本番に備えてもらおうという趣旨です。

授業では計算のスピードを上げる方法を伝授しています。問題を解いている最中にそれを思い出せうるかどうか、思い出してその方法で答えを出すに至ったか、そういったことも確かめてもらいたいです。先週はこの点があまりうまくいかなかったようでした。まじめな学生たちですから、みんな真正面から計算してしまいます。そうすると、80分で2科目は厳しくなります。果たして、今週はどうだったのでしょう。

80分で2科目、40問弱を解かなければなりません。マークシートを塗りつぶす時間を含めて、1問2分ほどです。計算問題が多い物理に少し長めに時間をかけるとすると、化学にかけられる時間はおのずと限られてきます。また、ある問題を10分かけて正解を得たとしても、その時間で他の問題4~5問解いた方が、いい点数が取れるでしょう。5分かけても解けなかったら、スパッとあきらめることだって必要です。

ほとんどの学生が80分をフルに使いました。解答用紙を集めてから、正解+解説を配りました。毎期、正解の番号しか見ない学生が多い中、今学期はみんな解説まで読んでいましたから、希望が持てそうな気がします。

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背中を押す

6月10日(月)

開場の12時少し前に私が挨拶をしていると、学生が入口からちらっと顔をのぞかせました。ほどなく挨拶が終わり、会場の外で待っていたその学生に中に入るようにと言いました。さらにもう3名ほど、続いて入場しました。今年の大学・大学院進学フェアは、こうして始まりました。

12時は、中上級クラスはまだ授業中ですから、1番に入った学生たちはみんな初級の学生です。でも、果敢に志望校のブースに向かい、拙いながらも日本語で質問していました。大学や大学院の話を聞くというよりも、自分の日本語がKCPの先生以外の日本人に通じたことを喜んでいるようにも見えました。

12:15、午前の授業が終わると、中上級クラスの学生がやって来ました。こちらは今年が勝負ですから真剣です。でも、その真剣さがあだとなり、きちんとした日本語で質問しなければと思ってしまった学生が少なくなかったようです。Sさんもその1人で、どこのブースにも行こうとしませんから、たまたま席が空いたA大学のブースに座らせようとしたら、「先生、ちょっと緊張しています」と言って動こうとしませんでした。でも、勇気を振り絞ってA大学の先生と話をしてみると案外通じたのか、C大学、H大学、F大学などを回っていました。教師の役割は、学生に大学・大学院で勉強したいことを聞いて、それにふさわしい大学のブースに学生を送り込むことです。Sさんのように、背中を押せば前進できる学生が多いのです。

今年の進学フェアは、国立大学のT大学とY大学が参加してくださいました。どちらのブースも、多くの学生でにぎわっていました。この中から何人でもいいですから、本当にT大学やY大学に進学する学生が現れたら、企画した側としてはうれしい限りです。

フェアの終了間際に、何校かの先生に直接お話を伺いました。「いい学生さんが多いですね」と、半分ヨイショでしょうが、そう言ってくださいました。本当にいい学生だったかどうかは、半年前後先の入試の結果でわかります。気を引き締めて指導してゆかねばなりません。

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