Monthly Archives: 3月 2025

長足の進歩

3月8日(土)

卒業式まであと4日。教職員はもちろんその準備を進めています。一方、卒業式で発表するクラブもその練習に余念がありません。私は、毎度おなじみ、演劇部の発表にチョイ役で加えてもらっています。セリフや動きは去年と同じですが、学生俳優と演技を合わせるために、先週から演劇部の練習に顔を出してきました。

私が練習に入る前からずっと練習してきたはずなのに、先週の時点では学生たちの演技はキレがなく、セリフも、覚えてはいるものの、棒読みに近かったです。指導されているN先生から厳しい声が飛ぶこともしばしばでした。しかし、今週になると、N先生の指導のレベルが1つ2つ上がりました。こうするともっと良くなるというアドバイスが増えました。これがクリアできたんだから、もう1段上をさせてみようというお気持ちだったのかもしれません。

「先生、そろそろお願いします」とお呼びがかかったのは4時過ぎ。午後からずっと6階講堂のステージで最終調整をしてきて、私たちも加えて通しでやってみようというわけです。

学生たちのステージを見て、驚いてしまいました。昨日も一緒に練習したのですが、段違いの出来栄えでした。セリフには感情がこもっているし、1つ1つの動きもきびきびしていて、目をみはるばかりでした。こちらも負けてはならじと力がこもります。こんなに急速に進歩した例は今までになかったのではないかと思います。学生側にN先生のご指導を演技に反映させるだけの力がついてきたのです。

私は4時半過ぎに引き上げてきてしまいましたが、その後も練習を続けていました。本番が楽しみです。

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進学相談

3月7日(金)

授業が終わると、Rさんが「先生、相談したいことがあるんですが、お時間ありますか」と聞いてきました。「3時頃まで予定が入っているから、その後ならいいよ」と答えると、「じゃ、それまで図書室で勉強してます」とRさん。

3時過ぎに1階に戻ると、ほどなくRさんも来ました。「で、どんな相談?」「S大学とA大学で迷ってるんですが、どちらがいいですか」「S大学のどこに進むの?」「工業化学です」「A大学は?」「応用生物です」専門性が微妙に違います。話を詳しく聞いて行くと、勉強したいことが勉強できそうなのはA大学ですが、一般に有名なのはS大学で、そこがRさんにとっては引っ掛かるところのようです。

大学のレベルは、S大学もR大学も同じくらいです。Rさんは大学院に進学するつもりですが、大学院進学率も大差ないはずです。どちらの大学も、きちんと勉強していれば、どこの大学院へも進学できるでしょう。海外の大学院だって、十分可能性があります。ただし、大学院で勉強したいことに近いのは、応用生物です。

Rさんの口っぷりからすると、名が通っているS大学に若干傾いている感じです。でも、それ以外の面を勘案すると、また、10年後のRさんの姿を想像すると、A大学の方が望ましい結果をもたらすような気がします。

Rさんは、来週、E大学を受験します。受かったら、そちらに進学するつもりです。でも、そこはかなり狭き門ですから、入学手続きの締め切りも迫っていることもあり、悩んでいるわけです。

それにしても、A大学は商売が下手だなあと思います。いい研究をされている先生方が大勢いらっしゃるのに、合格者の心をつかむに至っていません。K大学もそんな感じがします。私は毎年学生にすすめているのですが、受験する学生すらなかなか現れません。進学した学生は、「先生、いい大学を教えてくださって、ありがとうございました」と言っているんですがね。

“通好みの大学”じゃ、これからは通用しないと思いますよ。

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絶妙のタイミング

3月6日(木)

またこのタイミングか…。9時の始業のチャイムが鳴り終わるとすぐ出席を取り始め、クラスの半分強の学生の名前を呼び上げた頃、Yさんが教室に入ってきました。全員の名前を呼び終わる前に入室したら遅刻扱いにしないというルールがありますから、「出席」です。おとといこのクラスに入った時も、先週も、先々週も、計ったようにこのタイミングです。もしかすると、どこかで時間調整しているのかもしれません。Yさんはたばこを吸いますから、あり得ない話ではありません。

Yさんの名前を呼んでも、「はい」という返事は返ってきません。こちらを見て、小さく手を挙げているだけです。「私に気づいて」と訴えかけているかのようです。でも、授業中は、ずっと“指名するな”オーラを出し続けています。「私を無視して」と言わんばかりです。指名しても、蚊だってもっと大きな声で鳴くだろうという程度の声しか出しません。「えっ?」と聞き返しても、声は大きくなりません。グループワークでは発言が全くないのでいつの間にか仲間外れになり、ペアワークでは声をかけられても反応せず、相手を困らせてしまいます。

勉強ができないのかというと、決してそんなことはありません。漢字は、音読みでも訓読みでも、スラスラ読めます。いや、さらさらとふりがなを振ります。文の書き換えも、実に要領よくこなします。自信を持って振る舞えば、クラスのだれもが一目置く存在になれるのに。

Yさんは、日本で言う高卒認定試験を受けて、合格して、日本に留学に来ました。Yさんの話を組み合わせると、どうやらクラス授業に慣れていないようです。周囲とのコミュニケーションの取り方がわからないのでしょう。上述のように、朝、時間調整をして登校しているのだとしたら、教室でクラスメートと交わりたくないからなのかもしれません。日本の大学に進学したいと言っていますが、これでは絶対に面接で落とされます。

最近、Yさんのような学生が増えています。日本語力と同時に、コミュニケーション力もつけさせなければ、学生の希望はかなえてあげられません。純粋な日本語教育以外の人格形成みたいなところで苦労しています。

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練習

3月5日(水)

ちょうど1週間で卒業式です。だからというわけでもありませんが、卒業式での証書のもらい方の練習をしました。学生たちにとっては、日本式の証書のもらい方は、それこそ見たこともない、だから全くなじみのない儀礼です。何の指導もないと、少なくとも日本人にとっては頭を抱えたくなるような、目を覆いたくなるような惨状が繰り広げられてしまいます。

演台の前に立ち、授与者である私と向き合い、軽く一礼するあたりまでは、学生も想像がつきます。その後、私が差し出した証書を両手で受け取るというところが、学生たちの生まれ育った文化にはないようです。「両手で受け取る」というと、手のひらを上に向けて、私がその上に証書を載せるのを待っているというイメージになるようです。授与者が証書を差し出したら、自ら腕を伸ばして証書の両脇を持って…という手順をしっかり教え込まなければなりません。

私のクラスも含めて数クラスの卒業予定者が1人ずつそういう動作を繰り返すと、学生たちの目にもそれが当たり前のことのように映り始めたようです。しかし、どのクラスにも欠席者がいましたからねえ。そういう学生にもきちんと伝わるといいのですが…。

大学などに進学すると、2年後か4年後にKCPなんかよりもはるかに盛大な卒業式が待ち受けています。学長から直接証書・学位記を手渡されるかどうかはわかりませんが、そんなチャンスがあったら、ふっとKCPの卒業式を思い出してもらいたいですね。

1週間後には、目の前で証書の受け渡し練習をしたメンバーがみんないなくなっちゃうんですよね。一抹の寂しさを感じるのが、私にとってのこの季節の風物詩です。

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誰が書いたの?

3月4日(火)

来週の水曜日が卒業式なので、上級の選択授業は今週が最終回です。卒業式で大半の学生がいなくなってしまうため、それ以降は選択授業が成り立たなくなるのです。

毎週火曜日に担当してきた小論文も、最終回を迎えました。この選択授業・小論文では、しっかりした根拠に基づいて論理的に書くということを目標にして、毎週600字程度の小論文を書いてもらってきました。ですから、課題を発表してから、インターネットで調べる時間を与えました。調べ終わったらスマホなしで書くという進め方をしてきました。

そうやって書いた(はずの)学生の小論文を読むと、まとまりすぎている文章が、毎週いくつかありました。根拠を調べる時間に、それっぽいことが書いてあるページを見つけて、それを丸写ししたのかもしれません。あるいは、ChatGPTなどに書いてもらったのかもしれません。

このような文章は、まとまってはいるのですが、濁点が落ちていたり、促音の「っ」が余計なところに入っていたり足りなかったり、「、」と「。」を書き違えていたりなど、文章の内容にそぐわない間違いが随所に見られます。しかし、現場を見ていないので、「コンピューターに書いてもらったでしょう」と断罪するわけにもいきませんでした。

しかし、先月末の中間テストと卒業認定試験では、下調べは一切なしでした。すると、今まですばらしい小論文を書いていた学生が、急に意味不明の日本語の羅列を書き綴りました。見事と言うほかない落差でした。

最終回では、クラスの学生が書いた誤文をピックアップし、それを訂正してもらいました。化けの皮がはがれた学生のウルトラ誤文も載せようと思ったのですが、クラスで一番優秀な学生でも直せそうもなかったので、もう少し直しやすいのにしました。

反則技を使った学生たちは、卒業していきます。「大学に入ったら、もう少し上手にAIを使おうね」と皮肉ってやろうかとも思いましたが、誤文訂正の所でボコボコにしましたから、やめておきました。

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寒の戻り

3月3日(月)

朝は昨日の余韻が残ってむしろ暖かいくらいだったのですが、日中はどんどん気温が下がって、東京は16:00に最低気温1.8度を記録しました。その後も同じような気温で推移しています。

日本語プラス生物を終えて外階段を下りようとすると、学生が踊り場でスマホを外に向けていました。「雪の写真ですか」と聞くと、「はい雪です。きれいです」と、にっこり笑って答えてくれました。そういう学生が各階にいました。半袖の学生も、「寒いです」と言いつつ、雪を撮っていました。南国出身の、もしかすると生まれて初めて雪を見た学生かもしれません。

そもそも、東京に雪が降るのは非常に珍しいことです。平均すると、1年に数日にも満たない雪の日に遭遇できたのですから、大いに喜んでもらって結構です。もっとも、雪が積もって帰れなくなりでもしたら、話は別ですが。それにしても、これが箱根の日じゃなくて、本当によかったです。寒さに打ち震えて、バスから1歩も出られなかったなどということになったら、何のためのバス旅行かわかりません。

買い物に外に出たら、震えましたね。風が弱かったですからどうにか近くのお店まで行けましたが、横殴りのみぞれだったら、お昼抜きを選んだでしょうね。私のクラスは欠席者が目立ちました。電話をかけても出なかったというのは、寒くて布団から出られなかったのでしょうか。気持ちはわかりますが、それじゃいけませんね。

うちの近くの早咲きの桜は、昨日見たら、もう咲いていました。この雪には、さぞかし驚いていることでしょう。東京の雪は、冬型が崩れた時によく降ります。ですから、東京に雪が降るということは、春が近いということでもあります。桜にふさわしい日差しが降り注ぐのも、そう遠くないはずです。

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天気は最高

2月28日(金)

東京は、昨日に比べると雲が多かったですが、雨の心配はなさそうでした。学生たちには「時間厳守」とかなり厳しく言っておきましたから、予定通りに8時には出発できる態勢になりました。

途中の交通事情で海老名SAには若干遅れて到着。SA内を見回っていると、Mさんがたこ焼きを食べていました。「時間に遅れるなよ」と声をかけましたが、実に満足そうに微笑み返してくれました。調べてみたら、ここのたこ焼き、結構有名なんですね。

ところが、東名から小田原厚木道路を抜けて、国道1号線の箱根湯本駅前あたりから、車の流れがとみに悪くなりました。バスの中では箱根クイズをしていたのですが、そのクイズが全部終わっても、第1目的地の大涌谷に着く気配もありませんでした。私の隣に座っていたLさんが気を利かせてChat GPTで箱根クイズを作ってくれました。最初のは易しすぎたので、もっと難しいのと注文を付けたら、手ごろなのが出てきました。最近のAIは賢いものだと、妙なところで感心させられました。

だいぶ遅れて大涌谷着。私は、個人的には火口原に興味があり、そちらをじっくり観察したかったのですが、記念写真を撮った後、学生と一緒にお土産屋さんの中に入りました。ここでも学生たちは、喜々としてあれこれ買い込んでいました。もちろん、富士山も堪能しました。

それから箱根の関所へ。大急ぎで見学し、駆け足で箱根公園へ。学生たちは息を切らしてバスに戻って来ました。でも、芦ノ湖と富士山は堪能できたようでした。

そして、箱根神社に回りました。みんな、それぞれ、心に期するところをお祈りしたようです。おみくじを引いたYさんに、それをどこに結ぶのかと聞かれましたが、結ぶなという表示は目に着いたものの、結んでもよいというところは見当たりませんでした。神社の人に聞いてという、あまり役に立たない答えしかできませんでした。

見学時間を切り詰めて、予定に近い時間に箱根を後にしました。帰りも海老名SAに寄り、Mさんはまたもおやつに走っていました。他の学生も、時間に急かされるのが快感であるかのごとく、あちこちでいろいろなものを食べていました。

帰りも渋滞につかまりました。しかし、学生たちはおしゃべりに余念がなく、予定より遅れていたことに気をもんでいたのは、私だけのようでした。YさんとDさんは、しりとりをしていました。

30分遅れぐらいで新宿着。天気よければすべてよし。学生たちは満足気でした。私は歯医者の予約を入れていたので、そちらへ急ぎました。

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